外国人から見た‘日本の良さと助言’-Ⅲ

前回からの特集:≪新しい日本へ≫ 『復興の道筋を聞く』のインタビュー記事から、感銘を受けた語録の収録を続けます。

記事3;日経2011.08.14 掲載インタビュー
米ユーラシア・グループ社長
イアン・ブレマー氏(聞き手:米州総局編集委員 藤田和明氏)
世界の政治リスクを分析、各国の政府系機関や企業へ助言する会社

明確な外交戦略を持て
― 日本のリスクとして、政治の「無党状況」を懸念し続けています
一方、東日本大震災後、甚大な被害にも拘わらず、わずか数ヶ月で復興に動き出している日本人の姿に、世界は感銘を受けた。
 夏場の電力不足を市民みんなが我慢し、静かに慎み深く解決に当たる姿には、他の国はまねできない。しかし落胆させるのは、政治の混迷と無策ぶり、未曽有の危機にも政治は変わることなく、内紛を繰り返し、日本の未来への決断が出来ずにいる。日本のリーダー不在は深刻であり、政治への絶望感が極まっている。
― 日本が取り組むべき経済の課題とは?
日本で最も強力な経済主体はグローバル企業だ。それが日本を去ろうとしている。国内市場は縮小し、労働コストもエネルギーも高い。民主党政権で産業界や官僚とのパイプも途切れ、有効な産業政策も打てない。
 日本は‘成長’への投資をあまりにも怠ってきた。人口減少は深刻だ。移民はともかく、まず女性が労働参加し易い環境を整えた方が良い。
― 中国企業の台頭など、企業の競争環境は厳しくなるばかり
世界は、西側の自由市場の資本主義と、中国などの国家資本主義がぶつかり合う時代に入った。西側から得た技術を使って低コストの資本と労働力でシエアを奪う。ルールの全く違う国家が運営する企業との競争になる。西側が勝つには研究開発でリードし続けるしかない。高速鉄道など、一旦技術が渡ったら次はコスト競争で勝てない。これに適応できない企業は、競争から撤退すべきだ。

極なき時代到来
― 彼らが内包する弱さもあるのでは?
国家利益のために資本を配分する手法は、どこかで効率性を欠く。中国の鉄道事故は運営の不透明さ、安全基準の問題を暴露した。彼らはカイゼンを続ける組織ではない。カイゼンと起業家精神こそ西側が勝てる道である。
― 世界は主役なき「Gゼロ」の時代だと指摘されています。日本の進路は?
米国が覇権を握り、同一の価値判断へ向かうグローバル化への流れに日本がついて行く時代は終わった。自由主義の資本主義と国家資本主義が激しく火花を散らす、極なき時代のなかで日本も対応を迫られている。
 日本には本物の外交戦略が要る。貿易や通貨など多様な場面で利害が衝突し、安全保障のあり方も変わる。黙っていてはだめだ。国益や判断基準を明確に主張していかなければならない。国家のトップが外交を主導し、それを支える強力な安全保障の評議会や専門のシンクタンクも欠かせない。
― 世界が求める日本の役割とは?
例えば、危機に直面する欧州の財政問題。ここで日本の姿が見えない。強い欧州となるために何が重要で、何が出来るのかを、日本は欧州の将来のために発言をしなければならない。核拡散問題やアラブの民主化など、日本の経験からもっと主張すべきである。
 外国から見れば、日本は思慮深く、善意の国であり、長期的関係を築くことを重視している。震災では持続性や安定性を世界に見せた。かたや世界の国々は、成長を追い求め、環境や食糧問題などのひづみを生み、危うい次元に踏み込みつつある。日本が国際舞台で果たす役目はとても大きい。

前々回、前回と今回にわたって、 ‘日本の良さと助言’-Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの表題で、4名の外国の方々からのインタビュー記事を掲載した。
 何れも、日本の政府機関とか、企業との接触の経験をもつ知日派で、しかも国際派の方々の貴重な助言であった。危機感をはらむ外国の国々の未来も知悉されている一方で、日本はそれらの危機を先駆けて遭遇し、英知で乗り越えてきた優れた国民性であることも評価されている。
 しかしながら、日本は戦後、いわゆる西側の一員として欧米軌軸の傘の下で安住しながらものづくり経済大国へと発展を遂げてきたが、世界は一変して多極化時代に入り、国内に籠っていては衰退の道しかなく、生き延びて更なる発展を遂げるには、現在外国からも評価されている日本の良さをグローバルものづくりへと進化させる道しか残されていないのである。
 上記に掲げた、海外の諸賢の日本への助言を総括すると、‘日本流ものづくりリーダー’に課せられた任務は、先ず多極化するグローバル世界の国々へ出て行き、その国に立地し、その国の人々と協働しながら、その国へ日本流ものづくりを移植し根付かせ、育て上げることである。

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