グローバル モデル企業、コマツに学べ

先回までは、東日本大震災以降の日本の新しい‘グローバルものづくり’ヘの再出発を期す企業の姿を追ってきたが、次に掲げる企業は、既に10年前の2001年から、‘グローバルものづくり’への転身を図っていた。それは、先端グローバル企業;坂根正弘会長が率いる『コマツ』である。

次の多田和市氏のインタービュー記事を掲げ、‘グローバルものづくり’への再出発の理念と覚悟を読み解いてみたい。

日経ビジネス:2011.07.27
日経BPビジョナリィー経営研究所長 多田和市氏
『先端グローバル経営』に舵を切れ

《モデル企業、コマツに学べ》
第1回 日本企業はまだまだ成長できる


少子・高齢化、人口減少、円高、高い法人税など、日本企業を取り巻く経営環境は厳しさを増し、おまけに、東京電力福島の第1原発事故により、突然、惹起したエネルギー不足問題。日本国内にとどまっている限り、待っているのは「衰退」の2文字しかない。
 では、どうしたらいいのか?
成長分野に身を投じ、自社の役割を見いだすことだ。
具体的に言えば、急成長している新興国に代表されるグローバル市場で、自社の「強み」を発揮し、ビジネス展開をより加速することである。
 最近、日経ビジネスの取材で、コマツの坂根正弘会長にお会いした。
ご存じのようにコマツは、中国をはじめとするグローバル市場で積極的にビジネス展開し、高収益を上げている。2011年3月期の売上高営業利益率は実に12.1%。製造業としては極めて高い。
以下に、坂根会長のグローバル経営の考え方を紹介したい。

“日本企業は、円高や高い法人税、エネルギー問題など『五重苦』『六重苦』を抱えているが、日本の根本的問題は、成長しなくなったことと、デフレになったことだ。ただし、「今なら間に合う」”と、坂根会長は話し、“『東京一極集中』という日本の構造問題にメスを入れて、グローバル市場を本格的に攻めれば、再び成長できる”と強調された。

目指すのは、日本国籍のグローバル企業
コマツが目指すのは日本国籍のグローバル企業であって、無国籍のグローバル企業ではありません。今回の株主総会でも、“これだけグローバル企業と言われるコマツに、外国人役員がいませんね?”と質問が出ましたが、外国人役員なんて本来いらないのです。現地を外国人に任せているのだから。しかも、昨日今日入ってきた人ではなくて、中国でも28年目、米国でも二十数年、たたき上げでやってきた人たちです。たまたま日本国籍だから、日本に本社があって、その本社のボードメンバーは日本人だけなのです。 ただし、インターナショナル・アドバイザリー・ボードを作っていて、1人は外交評論家・岡本アソシエイツ代表の岡本行夫さんですが、残りの3人は米国人、欧州人、アジア人です。年2回開いて、普段役員会で議論している大事なことを4人に話をして、意見をもらっています。いわゆる外国人の目という部分はそうやって補完しています。
 だから、ボードメンバーに外国人を入れるという形式的なことにとらわれるよりも、実際グローバル展開をどんどんやってしまえば、形式的なことが大きな問題を持っているわけではないのです。
 世の中の「英語を共通語にする」という動きについても、坂根会長の意見は、“英語を共通語にするという単純な話ではなく、コマツウェイという基本的な会社の考え方を世界で共有していることが大事。同じ価値観を共有していれば、言葉のコミュニケーションは少々弱くても、大丈夫です。”

経営の見える化を徹底
 坂根会長は、「経営の見える化を実践し、正しい経営実態を把握できれば、正しい経営判断ができる」という考え方を持っており、社長に就任した2001年、日本でモノ作りを続けるかどうかを判断するために、経営の見える化を実施した。
すなわち、コストを固定コストと変動コストに分けたのだ。その結果、変動コストは、ほかの国と比べても遜色ないレベルだったが、固定コストが高いことが分かった。
 当時のコマツは、製品点数が多く、子会社もたくさんあり、固定コストを押し上げていた。そこで、建機の製品点数を一気に、約750から半分の約370に削減し、子会社の数を約300から約110にした。
 そのうえで日本の工場はマザー工場として、基幹部品を開発・生産する拠点として存続させることを決めた。現在、国内で世界全体の半分を生産している。
 「経営の見える化」に続いて、「顧客の見る化」を徹底させた。
「KOMTRAX(コムトラックス)」をオプションからコマツの負担で標準装備に切り替えた。

 コムトラックスはもともと、盗難防止のために始めたサービスだった。15万円を出せば、建機がどこにあるのか、顧客に連絡してくれて、簡単に分かるのだ。
 坂根会長は当時、「GPS(全地球測位システム)を標準装備すれば、アフターサービスで有効に働くだろう」と閃いたという。日本や米国でサービス部長を経験していたことで、クレーム対応で苦労していたので、建機の位置が正確に把握できれば、アフターサービスが劇的に変わると思ったのだ。
 GPSのほかに、様々なセンサーを埋め込むことで、故障する前に修理に駆けつけられるようになった。その後コムトラックスは進化していった。

坂根会長の直感は見事に的中。アフターサービスの顧客満足度は一気に高まった。コマツを指名する顧客が増えたのだ。顧客満足度が上がっただけでなく、コマツの収益性向上に大きく貢献した。つまり、コムトラックスによって建機の需要動向が正確に把握できるので、スムーズな生産調整が可能になり、無駄な在庫を持たなくなったのだ。修理部品の削減にもつながった。 さらに、需要動向が地域ごと、製品ごとにリアルタイムで把握できるようになった。例えば中国の景気動向も、コムトラックスを見れば一目瞭然だ。
 現在、インフレを抑制するために中国政府による調整が入っている。その調整がハードランディングなのか、ソフトランディングなのか、コムトラックスを見ていれば見極められるようになった。

カントリー リスクを最小化
「今回、中国政府は、2004年のようなハードランディングによる調整ではなく、ソフトランディングを狙っている。2004年の時は、約1万カ所あった工事現場のうち約6000カ所をストップさせました。ところが今は、建機の稼働時間が前年比で5~8%落ちている程度です」と、坂根会長は説明する。すなわち、コマツはコムトラックスによって、カントリーリスクを最小化することが可能になったのだ。
 その意味でコマツは、リスクを最小化しながら、急成長するグローバル市場から大きな果実を獲得するという、理想的な経営を実践していることになる。「先端グローバル経営」のモデル企業の1つだと言える。

参照:【「先端グローバル経営」に舵を切れ】
モデル企業、コマツに学べ
第1回 日本企業はまだまだ成長できる
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_116911_549045_120

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