先月の7月25日更新のブログで、日本電産 永守社長のインタービューで、“日本はもう一度、製造業の時代を目指せ!”という明解なメッセージを引用し、日本の新たな‘グローバルものづくリ’ヘの再出発のビジョンの構築と、それにマッチした「組織力」練成の道筋を考えました。
上記の日本電産の例に加えて、東日本大震災を契機に、日本の製造業が‘グローバルものづくリ’への再出発を果たそうとする動きが多く見られます。これらの製造企業のトップが掲げる「企業ビジョン」と、グローバル企業へ転出する姿を、次の報道記事を引用して追ってみたいと思います。
日経記事:2011.06.29
【新しい日本へ】 第5部「震災後」へ動く 3
攻めの経営 空洞化防ぐ
《提言》
●海外で稼ぎ国内に再投資する仕組み作る
●M&A活用し新興国でシェア首位目指す
●世界の人・技術取り込み輸出産業を創出
先端技術は国内、汎用技術は海外;―
こんな‘棲み分け’の常識を覆す企業が相次いで出ている。 内閣府によれば、世界の国内生産(GDP)に占める日本の割合は、2030年に5.8%になると予想。比率で最高だった1995年の3分の1に縮小し、世界の膨張から日本が取り残されて行く。空洞化防止を理由に先端技術を出し惜しみすれば成長の機会を失う。
東日本大震災で国内での企業の生存条件は厳しくなった。内需縮小や円高に電力不足が追い打ちをかけ、法人減税やTPP(=環太平洋経済連携協定)参加の協議も先送りされ、閉塞状態が深まっている。
‘棲み分けを覆す’と宣言する企業のトップ達;―
・東レが韓国で、炭素繊維の開発・生産に乗り出した。虎の子の技術だが、国内に封印はしない。6月28日現地の起工式で社長の目覚昭広氏は、“世界の中核拠点に育てる”と宣言した。韓国には現代自動車、サムソン電子など炭素繊維の採用に意欲的企業が多い。中国への進出もにらみ、アジアの成長を取り込もうとしている。
・三菱ケミカルホールディング社長の小林喜光氏は、“海外で稼ぎ、果実を国内に再投資して雇用を増やす”と、今後の成長の仕組みを示す。
東大准教授の大橋弘氏がコメントする;―
海外で稼ぐための条件は、“One of them を抜け出すための規模の力”と指摘する。それがブランド認知力を高め、経営を効率化する。
どうせなら成長の中心である新興国で首位を目指してはどうか。これは無理な目標ではないとし、次の例を掲げた。
・スズキは、インドの自動車市場で、5割弱を握っている。
・ソニーは、薄型TVでサムソン電子を昨年抜き首位になった。
・東芝テックは、デジタル複合TVで、中国でトップである。
・オムロンは、ロシアの血圧計で、50%のシェアを持つ。
・日産自動車社長のカルロス・ゴーン氏は、“現地の生産能力は必要”と考え、ロシア最大手アフトワズ社を、仏ルノーと共同買収する方針を表明した。
・武田薬品工業は、1兆円強で新興国に強いスイス企業を買収した。
上記の様に、海外事業でM&Aなどを行い積極展開してきた日本企業は手元資金75兆円を保有するまでに至った。しかし、10年度の日本企業が海外子会社から受け取った配当は2兆9千億円であったが、09年度に比べ8%減少した。この先も減少を免れない局面に入り、このまま、日本に利益を戻しても成長が描きにくい実態がある。次なる海外の稼ぎをどう還流させるか? 経営者は、新たな決断を迫られている。
「開国」で強く!
“それなら効果的な使い道をつくり出すしかない!” と、国内に強い産業基盤を築こうと、企業はそれぞれに「開国」へ動き出した。
・IHIは、海外人材の大量採用を進める。その中の一人、航空エンジンの部品開発に携わるフランス人、パロ・ギョウム氏(27)は、“日本の技術者は緻密で驚いた。フランス人はゴールに向かう力で優れている。お互い力を合わせればよい”と云う。外国人技術者も加わり高性能部品を開発できれば、量産担う相馬工場(福島県)が潤う。被災した同工場が輸出拠点として輝きを増す。
・日立製作所は、世界の従業員36万人のデータベースを作る。7月1日付けで新設するグローバル人財本部長に就く山口氏(59)は、“全世界で同じ仕組みで処遇し、仕事や教育の機会を与える”と、グループ900社で人事制度の壁を壊し、インフラ輸出拡大へ総力を結集する未来図を描く。
震災を目の当たりにした企業は自らの「国籍」を意識せざるを得ないが、国内に閉じこもる日本を世界は待ってはくれない。ひるまず世界に飛び出し、競い合う中で企業を強くする。それこそが空洞化を防ぐ解となる筈である。 |
参照:『変革へのギアチェンジ』
カルロス・ゴーン ルノー会長兼CEO、日産自動車社長兼CEO
http://www.nikkeibp.co.jp/article/reb/20110721/278396/?ST=rebuild