『日本流ものづくり』の行方を探る‐Ⅲ

前回より続けます。



(6) ニッポン復活の10年 [インタビュー] 黒田東彦氏 アジア開発銀行総裁     NK-100107

アジア需要で内需喚起/先端分野で常に首位を狙え

日本が活力を取り戻すために何をなすべきか。復活10年に必要な取組みを識者に聞いた。

― 日本のGDPは近く中国に抜かれます
日本企業のイノベーションや日本の科学技術力は優位を保ち、一挙に抜かれることはない。高成長の中国、日本の世界経済にたいする貢献度は米国以上、経済規模で抜かれる質的意義は乏しい。
日本の当面の懸案は、深刻なデフレの克服だ。物価安定の責任は政府、中央銀行にある。中期ではアジアの成長を活かす産業構造の転換が不可欠。財政・社会保障の安定と、高等教育、科学技術の競争力を高めるのも課題である。

― アジア経済の可能性は?
2010年代から20年代は『アジアの時代』になるのは確実だ。人口が10億人超の中国、インドとインドネシアを加えると2.3億人と日本、米国に次ぐ3つの人口大国がアジアにある。消費や投資の潜在需要は十分にある。

― その「アジアの内需」を生かす方法は?
まず発想の転換だ。日本が中国に資本財を輸出し、現地で組み立てた消費財を大量に欧米に輸出するモデルはもう無理。最終需要地が中国の国内やアジアの市場になるよう、供給構造を変えなければならない。日本企業がアジアの拠点収益を日本に戻し、それを国内で先端分野へ新たな投資に還元すれば、内需を喚起できる。そうした循環にすべきだ。

― 国内の雇用や成長に結び付くでしょうか?
韓国企業はインドなどへ積極投資で利益を上げたが、国内雇用が伸びていない。日本も高所得の雇用維持が課題である。日本は高齢化で人口が減り始めた。産業構造をうまく転換し、雇用の総数が増えなくても完全雇用が達成できる。
製造業は高度となり、一部はサービス産業になっていく。
機器本体が産む付加価値は小さく、大半はソフトウエアやコンテンツなどのサービスになる。モノづくり依存を変えなければならない。

― 日本の強みを保つために必要なことは?
大学の国際競争力や科学技術で、米国が突出している。日本は米に競争を挑み、世界のトップを絶えず目指すべきだ。中国やインドは、米国に流れた優秀な人材が本国へ戻り、科学技術や産業の革新を支え、急速に追い上げている。

筆者コメント:
上記インタビューの末尾で、“日本は米に競争を挑み、世界のトップを絶えず目指すべきだ”とあります。これは黒田氏がインタビューで、切って捨てるように簡単に云われました。しかし、日本はこれが出来なければ、アジアの新興国を味方に付けることができません。日本は欧米への輸出を前提にするモデルはもはや通用しないのです。アジアを味方に付けるには、‘アジアの需要’を満たすものづくりを先導し、アジアと共に経済成長を推進しなければなりません。この発想の原点を、‘日本の復活10年’、日本のものづくり全般に課せられた重い課題です。

以上の6月のブログでは、『‘日本流ものづくり’の行方を探る』を考える道標となればと、3回に亘り、昨年11月から今年の4月までの間に蒐集しておりました日経新聞記事から6点を選び、各記事の要点と、それぞれの総括として筆者コメントを付記しました。
そして、日本の製造企業の次なる課題は、上記の「道しるべ」を参考に、「自社のものづくりビジョン」を‘国内視野’から‘グローバル視野’への転換を図ったうえで、個々の社員が、グローバル市場へ飛び出し、社内、国内、海外のこれまでの身内でなかった人々と、「セレンディピティ」流の交流を深め、知恵を出し合うなかで人を育て、「企業文化資本主義」の時代を躍進していかなければなりません。
参照:2010年2月15日更新;事例から学ぶ「企業文化資本」の勃興
しかし、これを実践していくためには、従来の慣行のしがらみから、社員が飛躍する行動を妨げる情報システムとか制度、評価基準の残滓が残っています。

7月のブログでは、その様な社員の行動の障碍と、それを解きはなし、むしろ行動をサポートするIT活用の事例を、紹介したいと思います。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:http://www.fa-it-research.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/163