前回より続けます。
(4) 企業 強さの条件 -序章 多極世界に挑む NK-091118
先進国から新興国へ、「日本基準」は通じない
日本貿易振興機構(ジェトロ)は、95~2008年の市場拡大のうち新興国は4割を担った。09~14年ではこの比率が6割に高まると、試算する。
縮む内需、政権交代で企業に負担増の可能性も高まる。国内に閉じこもっていては生き残れない。危機感を強める経営者の視線は新興国に向かう。ただ現地化の前に「日本の品質なら売れる」という思い込みが強過ぎないか。求められる価格や性能、サービスの質は市場毎にすべて異なる。その一つ一つに対応するしか道はない。
未曽有の経済危機を経て見えてきたのは日本企業の「もろさ」だ。過去の広大な先進国市場や豊富な人材、安定した金融システム、これまでの成長を支えてきた条件はもはや頼れない。本当の強さを身に付けるために何が必要なのか?
下記、先行企業の事例から、多極世界に挑む姿を探る。
・《ヤマハ発動機》 アフリカの漁村へ船外機を売り込み、進出30年の教訓;
“日本仕様の品質は通用しない。”ここで身につけた泥臭さを全社に広げるさらなる覚悟が必要。
・《文具大手ぺんてる》 インド進出10年の教訓;
ここで学んだのは「価格は顧客が決める」 日本に居ては見えてこない多極世界での競争の現実。企業は「統計に表れない敵」とも戦わなければならない。
・《シャープ》 中国の携帯、激安市場で戦う戦略と教訓;
中国の携帯市場、1.6億台/年規模。世界最大手の『ノキア』は、3~4千台規模の大量中国製・激安模造品が次々と繰り出される市場に対抗し、低価格機投入で勝負しているが、《シャープ》が出した答えは、“安易な横並びでは、市場の激流に飲み込まれるだけ、「模造品」とは戦わない”と、独自戦略をとる。
中国の中間層も、目が肥えてきて、ノキアが主導する世界標準で飽き足らず、日本独自仕様の《シャープ》が売れ始めていると云う。
・《サムソン電子》 先行するグローバル人材の育成策;
1990年に導入した「地域専門家制度」は世界を覆う。1年間その国・地域で自由に過ごして文化を学び、人脈を広げる。制度を利用した約2000人がその地に赴任し、付け焼刃ではない現地化の取り組みを製品開発や営業に生かしている。 |
筆者コメント:
上記に掲げた企業事例は、何れも、永年アジアの新興国市場へ先行進出し、編み出した独自の事業戦略である。これからも一本調子でいけるとは限らない。その中で、韓国サムソン電子の取り組み、トップダウンの決断で進めた人材育成は、従来の日本流ではなかなか出せなかった機動的戦略である。この様なコンペティターと戦う一方で、アジアとして連携し、結束しなければならないと胆に銘ずべきだ。
(5)ニッポン復活の10年 NK-100104
深堀り技術で突破力
戦後、右肩上がりの成長を続けてきた日本企業、事業領域の広さを競う総合化路線に走りがちだった。その結果、経営の焦点がぼやけてしまっていないか? わが社の強みは何か? さらに強くなるには?
米欧に加え、新興国もライバルとなる次の10年、パンチのきいた技術と突破力が欠かせない。
こだわり派 急増
日本流の高品質や独自性へのこだわりは時に世界市場から敬遠され、「ガラパゴス現象」と皮肉られた。ただ世界と進化の波長がそろったとき、深堀り技術は一気に花開く可能性を秘めている。
今後10年、消費が活発化するとされる年間所得「5000$以上の世帯」が中国・インドで倍増の6億世帯に達する。進化を続ける土俵のレベルを見据えて、競う備えを固めたい。
「最先端」には突き詰めた技術と工夫が要る。こなれた技術でとことん安くモノをつくるにも知恵と工夫が要る。‘突破型’と‘普及型’がある、それぞれが稼ぐモデルを競えばいいのだ。
成長の原動力は企業である。ただ、国内でしのぎを削るのは過去のもの。豊かな消費者がアジアで増えてくる。環境分野の大競争はむしろ日本の応援団となる。走ると空気がきれいになる車をつくってもらいたい。
‘突破型’の企業例:
・《神戸製鋼所》 15年かけて編み出した、常識破りの『スピード製鉄法』
直径60mのドーナツ型の炉で、粒状の鉄ができる。巨大な高炉の従来方式に比べ48分の1の時間。年産50万tと多くはないが、質の悪い原料も使え、CO2排出量は高炉より2割少ない。
・《ホンダ》 『アシモ(2足歩行ロボット)』~『転ばないバイク』へと、こだわりの研究
土台となる技術は、既にある2足歩行ロボット「アシモ」のバランス制御技術を応用して出来た電動一輪車「U3-X」、座ったまま行きたい方向に体を傾けると、前後左右にどこでも行ける。「この技術を使って安全なバイクが造れるのではないか?」と、ホンダ創業事業のバイク革命へ、開発陣の意気が上がる。
・タイヤ大手の《ブリジストン》が造る『曲がる電子ブック端末』
電子ペーパーと電子回路基板を一体化し、同種の端末として世界で最薄5.8mmに凝縮した。タイヤと電子ペーパー、一見縁遠いが「材料技術の蓄積が生きた」という。 |
筆者コメント:
今後10年、アジアの新興国を牽引する中国・インドで中流所得の世帯数は、倍増し、6億に達すると予想される。日本のものづくり企業は、国内人口1億に比べ、桁違いの進化を続ける土俵のレベルを見据え、競う備えを早急に固め、勝負に出なければならない。
各企業は、この成長を続ける市場の波にのるため、‘突破型’か‘普及型’かを選択し、突き詰めた技術と工夫で勝負しなければならない。
そのヒントを得るため、既に勝負に参入する企業の事例を掲げた。
以下、次回へ継続します。