「アジアの共生」を導く日本の底力とは?

去る2月15日更新のブログ;『事例から学ぶ「企業文化資本」の勃興』で引用した記事;日本の電力会社連合がベトナム電力庁へ応札する‘原発事例’が、ロシアに敗退したと、先月2月9日の新聞で報じられた。かくも“原発大国といわれる日本の企業連合”が脆いものかと、吃驚仰天した。しかも、当時、ベトナムのグエン・タン・ズン首相が、日本経団連との会合で、“原発大国である日本の企業連合に期待したい”と、技術力と運営、資金、人材育成の4点の協力を提示し、日本の‘総合力’に熱い視線を送っていたのである。そして、国を挙げて原子力外交に駆け回るフランスや韓国の動きに対し、後れを取っているとの一抹の懸念があると書かれていたものの、当時の話題にもなかったロシアの国営原子力企業「ロスアトム」が、受注をさらって行った。その記事で、ロシアは、ベトナムと中国との間で南シナ海の領有権を巡る交渉が難航している点に着目し、日仏韓と全く異なる手法でベトナムに急接近し、“原発と武器供与をパッケージにして提案した”とみられている。

一方の日本の電力会社連合は、‘官民一体のオールジャパン体制’で臨んでいるにも拘わらず敗退し、“採算を度外視した安値提示と、政府の軍事協力など、何でもありだ。”と苛立っている。

私は、軽率にも、今日なお、世界の軍事対立のはざまで翻弄されている事例を、『日本の製造業の「企業文化資本」の勃興』に供したことは、はなはだ不適切であったと反省します。これ程ではなくても、政府が関与し自国の産業を有利に海外へ展開する事例は、世界で横行していることは否めません。しかし、我々はこの様なその場限りの外交・政治的手法に一喜一憂せず、‘負けるが勝ち’とし、世界に本物で貢献できる技術と人材を養うことを怠りなく行いたいものだと思います。

日本のものづくりは、アジアを中心とした新興国に対し、むしろ、『草の根』的な底力で、経済の共存共栄を図るべきと考えます。
下記に、この趣旨に合致する論説を引用し、考え方を進化させたいと思います。

日経新聞【経済教室】2010年1月4日;《日本の活路 2010 危機の先へ -1》
≪市場いかし再生の道拓け≫ [産業・文化の底力発揮]  歴史と東京の強み、再評価
スタンフォード大学 名誉教授 今井 賢一氏

<ポイント> 
ⅰ) 悲観に堕さず、しなやかに未来の展望描け
ⅱ) 貧困市場や中国のダイナミズム吸収を
ⅲ) 東京は技術・文化の変換能力で追従許さず


ⅰ) 新春を迎え、日本経済にとっては、まさに「失われた20年」であり、崩壊や亡国の兆しの論調をしばしば耳にする。しかし「崩壊」は虚飾と偽善を削ぎ落とし、矛盾との対立を鮮明する動的な緊張の中で、次の展望を拓く決断的知識が生み出される。この動的な過程に注目しながら、今こそ日本の産業と文化のもつ「底力」を再考し、しなやかに未来の展望描きたい。

ⅱ) 現在の日本にとって一番大事なのは、内向き経済を脱し、どう世界経済と関わるかである。惹起するグローバル市場のダイナミズムと一体化し、生き生きとした部分とネットワークを組んでいくことである。
世界には国や地域間で所得格差による人口階層が存在し、開放経済の下では、各階層の賃金が均等化しようとする圧力が働き、各国の経済規模もピラミッド型の相似形BOP(=ボトム・オブ・ピラミッド)になろうとする。所得格差を真に縮小するには、各層の底辺にあるBOP市場でのイノベーションが最重要課題である。今、その人口の多い貧困市場にも未来を孕む部分が生まれている。
シュンペーター学派を引き継いだ米・ニューヨ-ク大学のI・カズナー名誉教授は、“市場とは「発見を生み出すダイナミックな過程」” であると定義し、そのダイナミズムを実現していく最も重要な機能として企業者の「気づき」を強調している。今まさに必要なのは、この「気づきに基づく状況に適合したイノベーション」である。
日本が重点的に取り組むべきは、環境問題を通じての技術の協力関係である。その相手は、目覚める中間層のBOPである。特に中国は、開放経済の進展によるダイナミズムが活発になっている。その中心とみなされる「朱江デルタ」地域は、地政学的にみてもトップレベルの港湾・空港をもち、アジア情報ネットワークの拠点としても、有望である。
(以下、次回3月15日更新へ続く)

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