「アジアの共生」の肝は人づくりの連鎖と循環

前回ブログ;事例から学ぶ「企業文化資本」の勃興の結語として、“日本流を世界で受け入れられるためには、様々な限界を内包していると見なければならない。21世紀は「知恵」の時代と云われる。この観点から、大きな視野でレビューすれば、新しく進む道が見えてくる”と結語した。即ち、ここで云う観点とは、企業の人材が具える「知恵」を、グローバルな舞台で、如何に磨き、活用し、「企業文化資本」として競争力を高める経営サイクルに乗せ得るかどうかに懸かっている。前回掲げた事例から多くのヒントを得ることが出来ると思われる。

そして、事業戦略の策定に当たっては、5W1H(What or Whoから始まるWhere,When,Which,How)で計画を練り、着実に推進しなければならない。従来の資本主義経営では、‘Who’は5Wの計画の具体化の段階で決められ、後位に位置付けられていたが、これからの「企業文化資本」の時代の事業戦略は、人材(Who)と、何の事業(What)の何れかを、第一位、二位で策定しなければならない。

しかし、このWhat or Whoの決定は、企業固有の選択であるため、これ以上の言及はさておき、次の‘Where’が、‘地の利’としてどこから切り込んでいくかが、経営として重要なランクにある。これまでの論説とか記事から既に自明と思われるが、海外ユーザ、日本メーカ両方からWin-Winを期待されるのは、やはり「アジアとの共生」である。

そこで、朝日新聞 1月4日:社説 [アジアとの共生] 《手携え人づくりの大循環を》
の記事を引用し、以下に、[アジアとの共生] のあり方を考えたい。
幕を開けた2010年代は、世界的な構造変化が加速する。経済の分野では、米国一極集中から多極化へ、と云ううねりが起った。米国の過剰消費に世界中がもたれ掛ればなんとかなる時代は終わった。世界大恐慌以来の経済危機を克服する上で、協調は不可欠ではあるが、同時に各国が内需を振興し、自立的な発展を進めることが前提となる。特に、輸出と貯蓄にいそしんできたアジアなどの新興国が“豊かでエコで安心・安全な社会”をどう築くか。世界の安全と調和はそこにある。

一方、日本経済は生き残りをかけて、アジアへの融合が求められている。アジアの需要を、ただ取り込むという発想ではなく、近隣諸国の豊かな社会づくりに寄与し、結果として生れる市場の果実を得るようにしなければならない。すなわち、たんに商品やサービスを売るのではなく、現地に溶け込んだ商品・販路づくりや人づくりが欠かせない。現地の発展に日本のどんな資源が活かせるか、志を高く持ち、考え抜く人材を一人でも多く育てることが必要である。

すでに、多くの企業がアジア向け製品開発に走りだしているが、求められているのは必ずしも最先端の技術ではなく、むしろ蓄積されたものを適切に組み合わせる、『あり合わせ力』が問われている。例えば、日本の大手電機メーカの研究所には、韓国メーカなどが“すぐ製品化したい”と思う成果がたくさん蓄積されていると云う。従って、日本の産業は、持てる蓄積をアジアや世界の目線で認識し直すことが大切である。

この発想転換の勘どころの例を挙げれば、
01)「枯れた技術の水平思考」
任天堂のゲームづくりを率いる宮本専務の言を借りれば、成功の秘訣は、社員の頭脳に、失敗を含めゲームづくりの経験と知識が詰まっている。世の変化に応じて過去の蓄積から使える要素を引き出し、組み合わせて成功を収めてきたのだ、と云う。

02)需要と供給の微妙な食い違いへの「気づき」
米IBMはコンピュータを学術計算に使うという固定観念にとらわれず、事務処理に使うことを思いつき、巨大企業になった。とかくイノベーションには、発明が欠かせないと思われがちであるが、視野を広げて観ることにより、需要と供給の微妙な食い違いがあることを、いち早く「気づき」、転換を図ったことで、大成功がもたらされた。

03)新たな光を当ててみるべきものは企業だけではない
日本の地域に眠る「緑」、「水」、「海」などの自然の幸、独自の伝統文化や安全な社会といったソフトパワーにも再評価を。

等など、孫子の兵法に学ぶまでもなく、顧客と市場、社会を知り、自分を知ることこそが王道である。日本の再出発には、持てる資産を自覚する『ニッポン総棚卸』が求められる。

企業でも地域でも、人材が鍵を握っている。アジアが必要とする資源の情報を吸い上げる人、日本の資源で役立ちそうなものを提案する人などを連携させることで、人を養成し、アジアに大事なお客さん、かけがえのないパートナーがいると云う関係を網の目の様に広げていくことである。

日本の人材がアジアに出るだけではいけない。日本もアジアに開かれた社会に脱皮する必要がある。そして、アジアの人々と手を携え、大きな人づくりの連鎖と循環を生み出し、共生と新たな成長への道を切り拓きたい。

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