「人間中心のイノベーション」で日本は優位に
去る7月13日で、『「顧客の深層に潜む意味的価値」を希求する』で、日本企業はものづくりを伴わない価値づくりを目指すべきではない。両方の相乗効果を創出する経営が必要なのである。即ち、これが、価値を造り込むものづくりである。日本企業は元来、これが得意なはずである。と述べ、その方策を考えました。
しかしながら、これまでの日本は、技術革新に偏重して、ものづくりの進化を図ろうとする性向が強かった。そのため、技術が一般化(デファクト化)すると、日本が先駆けした電子部品や液晶などは、海外で安く作られ、価格競争に敗れる繰り返しをしてきた。それはどういう事なのかと、そして、今後どうすれば良いかを解説する記事を見つけた。
以下に、紹介し、『知識創造企業』をめざす製造業の『「顧客の深層に潜む意味的価値」を希求する』を再考してみたい。
日経新聞 09年8月18日P27:
【経済教室】 ≪「日本型イノベーション」のあり方≫ [生活者の感性 呼び起こせ]
『“「技術中心」から脱却を”――価値観や社会の変化誘導 』 東京大学教授 堀井 秀之氏
《ポイント》
01)「イノベーション=技術革新」の誤解をとけ
02)人間中心のイノベーションで日本は優位
03)「デザイン思考」重視し、日本らしさ追求を
以下に、上記ポイントの項目に従い要約しました。この内容は、日本のものづくりメーカが、自社の価値創造企業への変革の目標を定め、行動を促すヒントになるものと考えました。その現場をサポートする生産システムベンダーとしての我々の立場から見ても、「FA・IT」システムのあり方を、視野を広めて考えるヒントにも役立つと思い、それを意識してまとめてみました。
01)「イノベーション」の真意と日本の誤解
辞書で引くと、“(新機軸・刷新・革新の意);生産技術革新に限らず、新商品の導入、新市場または新資源の開拓、新しい経営組織の実施などを含めた概念”とある。この概念を導入したシュンペーターは、新しい発明がなくてもイノベーションは生じることを強調した。一方、我が国では技術開発を得意とするがゆえに、わざわざ技術革新という狭い意味でしか用いていないケースが多い。本来、価値創造が目的であるべきが、激しい技術開発競争のなかで技術目標の達成に専念するあまり、いつしか手段は目的となってしまった。イノベーションの本来の意味に立ち返り、どんな目標を目指すべきか?これまでの技術中心主義を改めるには、日本が本来得意とする「人間中心のイノベーション」へ回帰することが重要である。
02)「人間中心のイノベーション」への回帰
「人間中心のイノベーション」とは、‘生活者’に照準を定めることである。‘生活者’が潜在的に何を求めているかを感知し、“ああ、私はこういうものを求めていたのだ”と思わせるようなモノやサービスを提供できる様にすることである。この様にして、人々の生活や価値観を深く洞察し、新製品やサービス、ビジネスモデル、社会システムなどを生み出していくことで、人々のライフスタイルや価値観の変化を誘導するものである。注:‘生活者’を‘製造現場の働き手’と読み替えて考える。
日本人の感性に基づく優れたモノやコトを次々と生み出していくこと、即ち、「日本らしさの追求」こそが、日本が追い求めるべき戦略である。
日本人は、世界が称賛する「クールジャパン」で象徴されるように、人間中心のイノベーションを生み出す独創的能力に長けている。
03)日本流が「デザイン思考」の源流、日本らしさを追求
人間中心のイノベーションを生み出すためには、注目する状況に没入し、そこに登場する人になりきることが重要である。それを流通科学大の学長 石井氏は、新しいビジネスモデルが生まれる創造的瞬間に閃く知を『ビジネス・インサイト』と呼び、それを感得するには、対象に棲み込む(内在化する)ことが不可欠、と云う。また、上智大名誉教授の安西氏は、日本人がこの‘棲み込み’インサイトを得意とするのは、日本語と英語の根本的な発想・認識パターンの違いを鮮明に浮かび上らせ解明した。英語は、状況把握を<もの>の動作主性に着目し、因果律的に解析し概念化していく傾向が強いのに対比し、日本語は、状況をまるごと<こと>として捉え、人間との関わりを、人間の視点で密着して捉える。日本語の表現は主観的であり、聞き手はたえず話し手の気持ちに共感し、その場面を追体験しながら聞きその内容を感じ取る共感型であり、状況埋没型言語である。この特徴は、日本人が容易に相手に棲み込み、人間中心のイノベーションを生み出すことを得意とする根拠だと云う。
米国をはじめ世界では、この‘日本らしさ追求’の良さに気付き、イノベーションが生み出される環境を整え、トレーニングの重要性を認識しはじめた。この手法を『デザイン思考』と称し、注目している。