ITを‘手元道具’としての習熟を図れ

今年の春に、【トップインタビュー~大淘汰時代を勝ち抜く】ITpro、に掲載された記事;
≪強い危機感を抱く、キヤノン電子の酒巻久社長のインタビュー≫
『売り上げ半減でも利益の出る体質に変える』 
に出会いました。 参照;お勧め記事

この記事の中で、ITpro誌のインタービュ記者から、
― 投資の見極めが重要とのことですが、キヤノン電子のIT投資に対する考え方を教えて下さい ―
という質問に応えた、酒巻社長からの発言のくだりがありました。
この内容は将に、日本の製造企業が現在、直面する大淘汰時代を乗り切るための‘IT活用への経営姿勢と知恵の奥義’が込められていると惹き付けられました。 
以下にその関連部分を引用します。
 
≪目的意識のない人は情報を使えない≫
市場と事業が乖離しないような仕組み作りのためのIT投資に力を入れている。過剰在庫や過剰投資が起こるのは、本社の事業部門と、実際に商品を販売している部門との情報の連携が悪いからです。事業責任者が、実際の商品の売れ行きなど、市場の生のデータを見て意思決定できるような仕組みをITで作りたい。
ただ、ITで情報が流れる仕組みを作って安心していてはいけません。事業責任者は、受け取った情報を正しく分析できる力をつける必要があります。そのためには、1週間に1回でもいいから現場に足を運ぶ癖をつけ、データが現実と乖離していないかチェックしないといけません。
それ以上に大事なことは、得られた情報を何に活用するのか、その目的意識を持つことです。そもそも目的意識がなければ、どんな情報が必要なのか分からないし、データを分析することもできないでしょう。
ですから、情報を使う人の意識を高めておかないと、ITは生かされません。それを疎かにすると、「あんなに投資をしたのに全然ダメじゃないか」ということになってしまいます。そこで当社は現在、情報の見方や、それをどうアクションにつなげるかといったことを、役員全員に指導しているところです。

上記の‘奥義’とは、表題の≪目的意識のない人は情報を使えない≫に集約されています。そして、アンダーラインしたところは具体的行動として実施しなければならいことを示唆しています。

近年、日本企業でも‘IT’と云う言葉は頻繁に使われ、氾濫していますが、従来の日本流のEDPとERPを、未だに混同している企業があります。EDP(Electronic Data Processing )とは、文字通り大量のデータ処理をすることで、コンピュータは単なる道具です。それを運用・管理する部門を‘機械計算機センター’と称していました。経営幹部も、実務担当者もこのセンターからOut Putされるデータを‘据え膳’のように摂取し、何の疑いも抱かず、正しいものとして受け取る習慣になりました。そして、何時しかERPが導入される様になりました。ERP(Enterprise Resource Planning)とは、文字通り企業活動の最適資産(人・物・金)配分を計画する作業の自動化に使われる様になりました。しかし、ERPは本来現場の変動の実態を細かく反映すべきものですが、EDPからの慣習で、ERPのデータは正しいと信奉する多数派が存続しているため、現場実態の乖離に気付いた少数派の担当者が改善提案をしても、多数派に無視され勝ちになり、知らず知らずに多数派が、少数派の改善提案の抵抗勢力となっていました。

それが今日、一転して、グローバル大競争時代に突入し、日本企業の幹部・担当社員が自ら、世界に広がった市場・顧客の声と社内に発生している諸問題を自らの≪目的意識≫で‘ITを駆使’して競合他社よりも一刻も早く関連情報を集め、問題を知覚し、対処しなければならない大競争時代に入っているのです。

上掲文の末尾にあるように、キャノン電子ですら、役員全員にたいして、役員室の据え膳で受け取った‘IT’データを閲覧していては駄目であることに気づき、情報の見方や、それをどうアクションにつなげるかの指導をしていると云います。今や、日本企業にとって、‘IT’は‘機械計算機センター’に鎮座している重厚な設備ではなく、社長以下、全社員が使いこなす‘手元の道具’としなければならないのです。

欧米企業におけるホワイトカラー(事務・技術職)層でのマーケッティング・顧客サービスとか、マクロ経営戦略へのIT活用は、一日の長は認めざるを得ません。しかし、その一方で、事務・技術職と現場職との階級差は、厳然と存在しており、簡単には取り払うことはできません。
参照:欧州見聞記のブログ;欧米と日本の『「見える化」の原点―Ⅰ』

日本の製造企業において、現場の小集団活動などで長年に亘って培われてきた、社員間の一体感と、現場の実態に根ざした企業文化は誇り得るものです。この文化に、本来のあるべき‘IT’を‘手元の道具’として根付かせることを、急がなければなりません。

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