「顧客の深層に潜む意味的価値」を希求する

これからの日本企業がものづくりに取り組む、あるべき姿を考察するのに、恰好の“道しるべ”になると思い、採っておきしておりました記事を紹介します。
それは、少々以前になりますが、 日経新聞 09年1月15日から26日にわたって連載された:[やさしい経済学]ー《経営学のフロンティア》 「技術経営の神髄と価値創造」一橋大教授 延岡健太郎氏の解説記事です。以下に、私見を交えて要約します。

この解説記事の冒頭で;
日本企業のものづくり能力は、今でも世界で最高レベルにある。しかし、残念ながら利益や付加価値で表わされる価値づくりは苦手である。日本の製造企業の利益率は過去30年間を見ると下降傾向が続き、先進国の中でも低レベルにある。ものづくりはできても、価値づくりは不得手である。本論文では、この“価値づくり”を中心に説明したい。
近年、ものづくりと価値づくりの間の関係性が変わってきている。消費財メーカばかりでなく、生産財メーカでも、同業社と比較してものづくりが格段上というわけではないが、価値づくりに長けた企業が出現し、格差が顕われている。この様にものづくりと価値づくりが乖離してきたことで、2つの問題が見られる。一つは、未だに従来からの、ものづくりさえ上手くやれば、自然に価値づくりと結びつくと信じ続ける経営者が少なくないことだ。もうひとつは、ものづくりを徹底しても駄目だとあきらめ、力を抜いている企業が見られ、これは更に深刻である。
日本企業はものづくりを伴わない価値づくりを目指すべきではない。両方の相乗効果を創出する経営が必要なのである。即ち、価値を造り込むものづくりである。日本企業は元来、これが得意なはずである。その課題と取り組むべき方向性について、考察をして行きたい、とあります。

以下に解説記事全体を、私見を交えて要約します;

01)日本のものづくりがグローバル競争に勝つための要件

ⅰ) 自社商品の価値創出の根源を問い正すこと
優れた技術や商品でも、すぐに過当競争に陥り、価格が下がることが必然であることを念頭に置かなければならない。安定的な商品開発において差異化を実現し、かつ模倣されないようにするには?を問い質さなければならない。単純に、個別商品の差異化に焦点を当てていては駄目である。従来、日本の技術者は、価値創出の可能性が無限にあるにも拘らず、「商品の機能・スペックでしか価値は造れない」と誤解している傾向があった。
先ず、自社がグローバル競争に勝つためには、顧客から見た「深層からの価値」を探求することから始める必要がある。

ⅱ) 「深層からの価値」の共有と練成のための 「コトづくり」と、「人づくり」
継続的な商品開発で、差異化を実現して簡単に模倣されない状態を造るには、ⅰ)の「深層からの価値」を全社が共有し、その価値の創造と熟成するための組織体制(コトづくり)を進化させ、組織力の養成と人材育成(人づくり)をすることが肝要である。

02)ものづくりの強みを、「価値づくり」に結びつける “道しるべ”

ⅰ)「擦りあわせ(インテグラル)型」で生きる道を探る
標準部品を組み合わせた「簡易なものづくり」で、コスト低減に取り組むのでは、「日本企業の存在意義」を自ら否定することになる。
ものづくりに優れた日本企業は、それに見合った「価値を創出する義務」がある。その価値とは、自社の独善ではなく、顧客が主観的に、機能・スペックを超えて喜んでもらえる「顧客の深層に潜む意味的価値」を顧客から引き出し、「新たな価値を創出」することである。

ⅱ)一朝一夕には造れない「企業・組織としての強み」を目指す
特定分野における「企業・組織としての強み」を長期間にわたり、ブレることなく、鍛え続けることが必要である。 模倣できないのは、「時間をかけて積み重ねた組織力」だけと腹を括って、取り込む必要がある。

次回から、ものづくりの強みを「深層からの価値づくり」の醸成で実現するためには、「人づくり」が欠かせない。そして、仕事を通じて人材と組織力を育成できる「コトづくり」とは? そのために‘IT’を如何に活用するか? を考えたい。

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