日本は、『設計立国』を目指せ

米国の自動車企業が拘った‘分業型組織能力’は、歴史的産物であった。19世紀、流入する移民を即戦力としてきた米国には、「分業重視・調整回避」の製造思想が長く継承された。この「アメリカ製造方式」は、部品の加工精度を高め、組立ての調整作業をなくす「互換部品」に立脚していた。それを完成させたのは、1908年フォードが発案した‘T型フォードのコンベヤ組立てライン’であり、大量生産による圧倒的原価低減を達成し、成功を収めた。しかし、通用しなくなって、久しい。

一方、日本の製造企業の‘統合型組織能力’も、やはり歴史的背景があった。戦後、長期雇用・長期取引を背景に、設計・生産現場が、多能工チームワークにより継続的に練り上げてきた産物であり、一朝一夕に、他者が到達できない企業能力である。

この彼我の企業が指向する‘組織能力’醸成の違いで、前回のブログで掲げた事例のように自動車産業の市場が『小型主流時代』に変遷し、日本流の‘統合型組織能力’に軍配が上がったのである。そして着目すべき点は、日本の自動車部品メーカは、車体メーカの垂直関係で海外進出し、取引されているのが通例であったが、近年、独、韓の車体メーカに選ばれるまでに成長したことである。この事実の中に、その自動車部品メーカ自身が、グローバルオープンな取引もこなせる‘統合型組織能力’を進化させている事が、見て取れる。この成功をみて、他の部品メーカも海外進出を追従することが期待され、日本の製造業の未来に一筋の光明が見えた気がします。

しかし、この企業は長期受注の成約に成功したとは言え、日本の汎用電子部品の様に‘分業型組織能力’の方への転向を迫られる試練が訪れる恐れもある。そちらへ押やられた場合は、汎用部品のコスト競争のビジネスに陥ってしまう。この道への繰り返しでは、日本の製造業はグローバル市場に存在感は薄れるばかりである。

今や、“日本の製造業がグローバル市場でリーダシップ取り続けるには、『如何なる独自の強み』で臨むべきか?”を各企業が自問自答し、着実にその能力を熟成しなければならない正念場にあると考えます。

再び、藤本先生の参考になりそうなインタビュー記事を見つけました。

お勧め記事;
日経:09年4月26日 P6 ≪検証・グローバル危機≫ 藤本隆宏氏 東大教授に聞く

【日本は設計立国目指せ】 《深層の競争力、維持がカギ》
(関係文のみ抜粋・簡略化加筆)
―― 日本の基軸産業が揺れています。
企業の競争力には『表層の競争力』と『深層の競争力』の二つがある。表層の競争力は売上高やシェアなど数字で表れる。一方、深層の競争力は開発や生産など現場の実力を反映する。
今、日本の輸出企業は表層の業績に大きなダメージを受けている。これが現場の深層の競争力にどれだけ影響を及ぼすか、最近見た自動車工場では生産量こそ減っているが、品質やリードタイムに乱れはない。

―― 日本企業の強さに変わりないと?
企業はピンチだが、強い現場は残っている。業績が落ちる今こそ、現場の『深層の競争力』をどれだけ維持向上できるかで、差が出るだろう。
生産量が減れば労働生産性は低下する。肝心なのは製造品質、設計品質や、開発生産性が落ちていないかどうかだ。それ次第で危機からの復元力に違いがでる。現場力の維持に成功したか、5年後に分かる。

―― 日本は製造業中心で生き残れますか?
日本が今後、どの産業で勝負していくかは、従来型の産業分類;鉄、自動車、家電・・・など、では、もはや分からない。現場で夫々の製品の設計思想を確認する必要がある。
例えば、日本の化学産業は構造不況に陥ったが、精密化学に注力して競争力をつけた例もある。同じ業種でも弱い分野と強い分野、国内で伸ばすべき分野と縮小すべき分野が混在している。

―― 日本にとっての戦略分野は何でしょうか?
ひと言で云えば『設計立国』。シュンペターは、革新には製品設計だけでなく、プロセス(工程)設計から組織設計まで様々なタイプがあると説いた。
『製造業から金融へ』というスローガンでは大雑把過ぎる。
どの分野でも設計能力が低ければ、淘汰される。競争を通じて日本全体の設計能力が底上げされ、あらゆる産業分野に日本の得意分野が散らばって存在する姿を予想する。
(聞き手は編集委員 西條都夫)

この記事にある様に、各企業が、自問自答し、自社の『深層の競争力とは?』を問い続け、それを長期視点での継続的熟成を図るための企業活動の仕掛けを『設計』し、絶えず革新・練磨することである。

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