88年FAシステム部創立までの事柄
これより「杉山氏を偲ぶ」の最終段階として、私が制製部の次長に就任してから、FAシステム部が創立される88年10月までの2年間の事柄を綴って行きたいと思います。
01)シーメンス社の開発担当副社長の名電来訪と独・研究所への招待
突然、シーメンス社の副社長が名電を来訪されると言う話が舞い込み、私とFAコントローラC1の開発リーダの‘N’さんとで応対すよう指示されました。シーメンス社からのVIP訪問ということで、緊張した反面、何を探りに来られるかの疑念も湧き、どこまでの説明と見学をして頂くか、喧々諤々となりました。結果的には、一般的な海外VIPのご案内コースと云う事で、名電のコントローラ関係(FA,PC,NC)の概要を紹介することに落ち着きました。
いよいよ当日の朝、副社長(S-VP)と日本シーメンス代表の2人きりで、名電へ到着されました。最初に、VIPルームへお入りになり、当社側は所長と制製・数製両部長に、私と‘N’さんとが同席して、歓迎挨拶と懇談をしばし行ったのち、ビデオによる名電説明をご覧頂き、あとは私達2人に任せられ、コントローラ製品をカタログで紹介した後、関連工場の見学と「加工技術センター」(注;現在のFAコミニケーションセンターの前身)へ随行し、各々の工場とセンター見学では、担当課長が待機しており、彼等が説明を行い、粛々と行われました。そして、昼食となり、「たちそう」という名電の接待レストランで、4名で‘簡素なサンドイッチ昼食’をとりました。‘S-VP’は品格のある紳士で、始終ニコニコと穏やかに談笑して下さいました。私たち2人は、無事に接待が終わりお送りして、ほっと、しました。
暫くして、S-VPから名電訪問の御礼とともに、私と‘N’さんを独・シュトゥットガルトにあるシーメンス中央研究所へ招待したいという書状が来ました。私達は大手を振って、欧州出張することが許可され、出発しました。デュッセルドルフの三菱電機・欧州地域販社(MEG)に立ち寄り、当時のMEGの代表‘N2’さんに付き添っていただき、シュトゥットガルト空港へ、3人は、降り立ちました。そして、ゲートを出たところで、なんと! S-VPさんご本人が独りで、ニコニコして出迎えて頂きました。既に日本で親しく談笑をしていましたので、研究所までの車では、一層話の花が咲きました。
研究所では、至れり尽くせりの準備が整えてあり、またもやご本人が付き添って、数箇所の研究室へ案内して頂きました。最初の部屋へ入ると、研究者が待機しており、白板に貼った説明用模造紙と現物を使って懇切な説明を受けました。他の部屋でも同じ様に説明を受け、我々一同、VIPになった気分で、スムーズに見学巡回しました。その様は、さながら三菱電機の社内のVIP・技術者を招いて毎年催される研究所公開の如き光景でした。そして、昼食の時間となり、シーメンスの上級幹部用レストランに案内されました。ここでもS-VPさんお独りで我々を接待され、美味しいディナーとワインを供され、話題が弾み、楽しんでいました。最後のティータイムの時、突然、日本の某自動車メーカヘ納入した「外販第一号のFactoryLand―C1システム」の現地調整で出張駐在している‘FAシステム課のKくん’から緊急電話が掛かってきました。(注:この内容は次の02項で書きます)
その時、S-VPに、“君たちは、そんなに忙しい‘VIP’だったのか!”と冷やかされてしまいました。
この出張で、この様な行き届いた接待を受けましたが、名電に来訪された時は‘何を探りに来られたのか?’と呟いていたさもしい心の底を見抜かれた様で、反省しきりでした。案の定、その後、シーメンス社との間ではなにも起こりませんでした。そして、その後のVIP接待の場面では、「最初が肝心」と肝に銘じて、心を尽くして行う事にしました。
02)外販第1号のF/Land―C1システムのプロジェクト崩れ
私達は、ドイツから帰国し成田に到着しました、名古屋への乗り継ぎをキャンセルし、首都圏にある某自動車メーカのトラック組立て工場近くのホテルへ、夕刻到着しました。そして、先ず、‘K’くんから、“プロジェクト崩れ”の状況を聞き、翌日の行動について打ち合わせしました。
このシステムは、仕様の異なるトラックの‘一個流し’式「運転台組立てライン」で、当日の組立て順に、マトリックス状の‘運転室キャビン’のストックヤードからジクソウパズル式に縦・横コンベヤを制御し、組立てコンベヤラインヘ払い出し、複数連なっている組立てステーション毎に、作業指示・完了操作盤が設けられており、組付け段取りされている該当部品を作業者へ表示し、作業完了を確認するためのものです。
‘K’くんは、調整テストの不具合でラインストップが頻発するので、客先スタッフとの進捗フォロー会議で、客先責任者から、“コンベヤを動かして、現地でSWデバッグをやっている! プロジェクト管理と作業方法の改善” を再三、要求され、自分は信用されなくなっていると言います。翌日、現場の様子を見て検討し、フォロー会議にも一緒に出て、叱られながら改善策を提案し、‘N’さんには当分、現地に滞在してプロジェクト進行の改善を見届けると言う条件で、承諾を得ました。