‘SRIプロジェクト’ の開始
(前回から続く)突然、‘SRI’とFMS(Flexible Manufacturing System)の共同研究をすることになったので‘SRIプロジェクト’を結成し、ディスカッションの準備をするように命じられました。約1~2ヶ月後に、米国・カルフォニヤ州メンローパークのスタンフォード大学近傍にあるSRIから、リサーチャー6名が共同研究のテーマをディスカッションするため当社に派遣され、名電で‘SRIミーティング’を開催することになりました。私は英語でディスカスするほど英会話が堪能ではないので、尻込みしました。すると同時通訳も手配してあるので、どうしてもやれ!と云われました。
80年代当初、FMSは、産業用ロボットが実用されるようになり話題になり始めた頃で、サブシステムとしてロボット、工作機械などを中心にFMC(FM Cell System )を構成単位として、FMSを構築するものです。この様な概念のシステムを社内で実用して研究・開発することにより、①ロボット、NC、シーケンサー等で構成する製造現場のフロアーレベル・FAコンポーネントのあり方、②セルレベルを統括する‘FAコントローラ’のあり方と、③それらの複数のセルを統括する生産エリヤーレベルの統括‘FAコンピュータシステム’のあり方、の3つの階層に分けた考え方を実用的に明らかにすることを目的としました。
解説;
その後、『IEC/ISO62264, Enterprise-control system Integration 』が制定され、‘製造作業管理システムの参照モデル’:レベル=0、1-2層、3層、4層と規格化された。現在、製造‘FA’システムと企業管理‘ERP’システムとの中継システムとなるレベル3(即ち、ここで掲げた②、③項)を中心に、上下階層の詳細の規格化が検討中。
ケーススタディーの候補として、名電の2つの製造現場を選び、このFMSモデルに当てはめたシステム構築案をSRIへのプリゼン用にまとめました。下記2つのケースです。
01)新城モータ工場のシャフト加工ラインFMC
当時のモータ製造では、顧客ユーザの機械とのカップリングでシャフト加工仕様は個別化し、客先への出荷は、顧客設備のモータ容量とシャフト仕様が多様化したモータ群を、新城工場で品揃えして一括出荷が求められていました。そのため新城工場では多様なモータシャフトの加工は、組付けされるロータ巻線工程とのドッキングと、ステータ工程とのジャスト・イン・タイム(JIT)が求められるネック工程でした。
02)産業機工場(放電加工機・レーザ加工機)の加工・組立FMS
この工場では、顧客オーダーの出荷順の生産が求められ、加工機のベース、加工槽と加工コラムの3点セットを、マシニグセンター(MC)で機械加工し、下流の組立工程に‘JIT’する様に払出す必要があります。従って、MCの機械加工FMCは下流工程による典型的な‘プル生産方式’を実施することが求められます。組立工程は昼間作業で行われるため、MCは翌日の組立計画に合わせて、夜間無人運転も行われるため、加工ワーク・材料の払い出しと加工完了品の一時ストックは、自動倉庫・コンベヤシステムで入出庫し、ツールチェンジは外段取リで、昼間にセットアップしておき、夜間自動運転をする必要があります。
この様なシステム構築案を、杉山氏と一緒に所内の製造現場と生産技術部門とを駆けずり回り、SRIミーティングまでに纏め上げました。
いよいよ‘名電名物のさくら’満開の春爛漫に、女性2人を含む6人のリサーチャーが名電に到着し、歓迎会から始まりました。予定通りベテラン同時通訳の女性2人も同行して来ました。
SRIミーティングでは同時通訳も可能でしたが、当方のヒヤリング間違いを避けるためと、英語での即応が出来ないので、正確を期するという名目で、双方向逐次通訳で実施することに同意してくれました。
お陰でコチラは、英語交じりの日本語でペラペラやり、先方の英語は正確な日本語で訳してくれ、言いたいこと聞きたいことを自在に繰れる快感を経験しました。事前の心配は吹っ飛びました。会議のアフター会食も通訳がついてくれ、和気藹々と進みました。その後のメンローパークでのSRIミーティングも、この様に通訳付きで楽しみました。
それまで、私は海外出張で、タドタドしい英会話でフラストレーションがたまった経験が幾度かありましたが、心配無用でこんな素晴らしい経験は、貴重なものでした。この経験は、その後外国人との対話は下手な英語でも通じさせる度胸が付き、外国人へのコンプレックスとは無縁になりました。この共同研究の間接的効果として、我々メンバーのその後の海外事業への積極性が培われ、莫大な費用を遣わしていただいた、‘I’開発部長の懐の大きさと、それを大目に見て下さったS所長他、幹部の方々への尊敬と感謝の念を抱いております。人材育成面での長期視点での鷹揚さの必要性を今更ながら痛感しています。