三菱電機FA事業の“草創期”の始まり

杉山氏が入社される1年前の1971年、インテルの4ビットワンチップCPU(i4004)が発売されました。CLP(Crane Local Processor)の制御ロジックは、従来のワイヤードロジック方式からマイクロコンピュータ(μP)によるソフトウェア(SW)化が始まりました。しかし、4ビットCPUでは命令ステップが多く、煩雑で、制御のリアルタイム性を確保するためにハード・ソフトミックスの制御方式となり、開発に手間取っていました。さらに、納入後の電磁ノイズによる電子装置の誤動作対策に四苦八苦しておりました。この最中に彼が開発メンバーに加わり、主としてSW開発を担当し、気力・体力の発揮が始まりました。そして1974年に、8ビットワンチップCPU(i8080)が発売され、いち早く採用してCLP-N30/50の新シリーズ開発を進めました。その主要メンバーとして、活躍され、前回ブログ末尾のマイクロコンピュータ(μP)時代、即ち、『三菱FA事業の“草創期”』が始まりました。

前々回のブログで掲げました「ムーアの法則」にあるように、ワンチップCPUは次第に大容量・高速化し、半導体の集積度が上がりCLPのサイズはむしろ小型化しました。次第に制御ロジックも高機能化し、SW規模が膨大となり、プログラミングとデバッグの効率化・品質の課題が大きくなりました。これがFA事業の60年代の“胎動期”から70年代の“草創期”への流れです。

前回ブログのFA事業の “胎動期”末尾の出来事「NKK扇島プロジェクトの商談」をきっかけに、“草創期”の初期の段階に入りました。NKK建設本部長のCLP―N新シリーズの立会いが行われるということで、名古屋製作所では、おおわらわで立会い準備を整えました。当時としては、クレーンに搭載するμPは鉄鋼では始めての試みでした。

立会い試験の注目ポイントは次の3点に集約されました。

01)CLP-Nシリーズの信頼性と本体・周辺機器の実装構造

周囲温度50℃(電機室の部分空調を行う)環境での動作と、耐震構造(盤据付、プリント基板の接栓・端子、接続線、の耐震対策)の評価。

02)移動体間データ・信号伝送の光通信方式の採用

これまでに実用化されていた有人のオペレータガイド方式は、地上―機上間通信は誘導無線が採用されていましたが通信環境が劣悪のため無人運転には不向きとし、光通信を採用。クレーンガータの走行路は直線であるため、空間光伝送方式を採用し、ガータ上の移動信号(走行、巻上げ、横行の位置センシング)は光ケーブル巻取り方式などが採用され、誤りチェック、冗長方式による自動修復などの確実性と安全性の評価。

03)横・走行移動位置検出方式

位置検出は、走行レールにタッチローラを取り付け、電磁誘導式多相シンクロリゾルバーによる回転角度検出を、一定間隔にビットコードの鉄片を敷設し、移動体側の近接スイッチで絶対番地検出して補間修正する準絶対番地方式を採用。これも自動修復などの確実性と安全性の評価。

これらの項目は、それまでの自動倉庫スタッカークレーン・立体駐車場、鉄鋼プラントの半自動クレーン(オペレーションガイド)、鉄鉱石・石炭の原料ヤードのスタッカー・リクレーマ、コークス炉押出し機の自動運転等の経験を総括し、新規技術を取り込み、本プロジェクトへ提案し、開発を進めたものです。

NKKの立会い試験当日は、現物を取り揃え、事前に採集した試験データなどを色々準備しましたが、最も心配されていたのは、01)項のクレーン上に搭載するCLPと信号伝送、絶対番地検出の電子装置の信頼性と耐震対策でした。そのため、CLP制御盤を現場で取り付ける方法を模してアングル溶接構造を作り、航空電装品担当部門の振動試験機を借用し、立会い場所に持ち込み、CLP盤を取り付けたアングル構造を振動試験機に固定して、加振しながら模擬動作試験を行う準備をしました。

建設本部長、技術員お立会いのもとで、試験スケジュールは順調に進行しました。そして、最後のとどめの段階;「振動試験」の最中に、名古屋製作所のS所長が現場に現れ、“佐竹グループがこんなに本気になってやっています。信用してやって下さい!”と建設本部長に囁いて頂きました。工場お立会いの首尾は上々でした。

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