三菱FA事業の“胎動期”(前編)

杉山氏の入社から10年遡った、1962年に私は入社しました。この時期は、テレビ、ラジオなどの家電製品に半導体部品が採用され始め、真空管製品は瞬く間に無くなりました。トランジスタなどの半導体素子が量産され入手し易くなり、少量使用の産業機械制御分野へも応用が進み、産業エレクトロニクス化時代の第一幕“胎動期”があけた頃でした。

ちなみに、Wikipediaで≪トランジスタ≫と≪ムーアの法則≫を検索しますと、次のように書かれています。

  トランジスタの発明は、1948年6月30日にAT&Tベル研究所のウォルター・ブラッテンジョン・バーディーンウィリアム・ショックレーらのグループによりその発明が報告されている(この功績により、1956年にノーベル物理学賞受賞)。
この前年の1947年に日本のNHK技術研究所の内田秀男がすでにトランジスタに相当する増幅回路の発明を報告していたが、GHQの検閲を受け、発表が取り消された経緯があるとする説がある。
そして、トランジスタの普及は、1960年代に入ると、生産歩留まりが上がってコストが下がり、また真空管でしか扱えなかったテレビのような高い周波数でも使えるようになったため、各社から小型トランジスタラジオやトランジスタテレビが発表される。さらに高い電力やUHFでの使用が可能になる1970年までには、家庭用テレビやラジオから増幅素子としての真空管が姿を消す。
トランジスタはその後も集積度を高めて、ICやLSIといった集積回路へと進化する。
そして、Electronics Magazineの1965年4月19日号で、ムーアの法則が発表された。“最小部品コストに関連する集積回路におけるトランジスタの集積密度は、18~24ヶ月ごとに倍になる”という経験則である。インテルの共同創業者ゴードン・ムーア氏が提唱した。
この集積度の推移は、1971年のワンチップCPU4004の出現以来、2004年のItanlum2までの33年間、ほぼ24ヶ月毎で2倍のペースで集積度が上昇したことがグラフ表示されている。

とあります。FA事業の発展と家電のトランジスタ化とが連動していることに、当然のことながら驚き、興味が惹かれます。

02)トランジスタの発展期と連動したFA事業の“胎動期”の始まり

私の入社当初、クレーン、ロープウェーイ等の荷役搬送機械の制御盤設計課に配属され、制御盤の板金設計、盤内の主回路電路図・制御配線図の作成から始めました。制御回路の先端技術として無接点化が開始されていました。AND、OR、Flip-Flop等の基本回路をトランジスタ回路でモジュール化したものをトランジスタリレーモジュール(TRM)と称し標準化されていました。これらのTRMを組み合わせて制御ロジックを設計し、所用のTRMをパネルに配列し、バックパネルの入出力ピンをハンダで結線して回路を構成し、その出力をトランジスターアンプで増幅して、電磁継電器・開閉器などを駆動する、所謂‘無接点リレーによるワイヤードロジック方式’が行われていました。

一方、主回路は巻線型誘導電動機の回転速度のフィードバック自動制御が行われていました。電動機の一次主回路の2相に可飽和リアクトルを挿入し、リアクトルの制御巻線にDC電流を加減することにより、モーターに印加する電圧をコントロールします。当時はパワートランジスターの容量が小さく、サイリスターアンプで増幅して可飽和リアクトルを励磁制御していました。この様に、モータの駆動制御を中心に半導体部品が採用され、制御性能が向上した時代です。

その頃、三菱長崎造船所で30万tドックが建造されることになり、高さ60m×幅60mの門型クレーンがドックを跨ぎ、ドッグの長手方向に走行する‘ゴライアスクレーン’2基の電機品を受注していました。船穀工場から大型船穀ブロックを2基のクレーンで4点共釣りし、巻上げ、横行、走行の各軸の複数モータを揃速制御で搬出し、ドック上でブロックを各軸連動制御して反転させ、溶接組み付けする制御システム電機品1式です。この様な初めての大規模記録品を受注して、幾つかの開発項目を受注オーダで開発してしまうメーカも勇敢ですが、それを任せるユーザも大した度胸でした。設計課内の敏腕開発担当のY係長が、いとも簡単そうに新機軸の開発を指導されていました。その中の一つを新人の私に課せられました、クレーン制御の心臓部とも云える「リアクトル制御のサイリスタ点弧回路ユニット」でした。学生時代、チンプンカンプンで受講した自動制御理論です。モータのタコジェネから検出した速度と基準速度とを差動アンプを通してサイリスタの点弧を自動制御するユニットの開発です。最新のサイリスタのトリガ素子として開発された安定な高出力パルスが得られるユニジャンクショントランジスタ(UJT)を使い、前段の差動オペアンプ部をトランジスタ、抵抗、コンデンサなどの素子をラグ板に初めて半田ゴテを使ってバラック組立てし、恒温槽へ入れて特性データを採り、Y係長に報告・改造を繰り返してやっと完成しました。半田の煙を吸い、喉をやられ変な咳きが出ました。

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