製造業の「知」の総力戦、どう戦うか - Ⅰ
前回のブログで、これからの日本は、「洋IT」を駆使して「人を育てるコトづくり」であると述べたが、今回は、この「洋IT」とは如何なるものかの根本を理解しなければならないと思う。
従来、日本で使われてきたITは、欧米生まれのERP、CADなどが導入され日本流に改良を加えていったものであった。企業のビジネスプロセスのルーチンワークを自動化・高速化する用途、即ちホワイトカラーの定型業務を対象としてきた。システム導入が開始された当時は、すでに業務システムはデファクト化されたパッケージソフトであり、いわば、欧米流のビジネスプロセスに合わせる形で浸透してきた。しかし現状はその延長線でのIT応用に留まっている。いまや欧米では、一歩さきを行き、有能なビジネスマンの知識処理分野にIT活用の拍車が掛かっており、マーケットリサーチとかビジネスシミュレーションなどに活用されている。日本の先進企業でも取り組みが始まっているが、全般的にはこの「洋IT」は、大きく後れをとっている。
「IT=Information Technology」は、本来文字通りの「知」を扱う技術である。日本企業は歴史的に成熟した欧米のITソフトを導入することに慣らされて来たので、ITを導入すれば即効果が出ると誤解する人が多い。これからの製造業のグローバル競争では、「各企業固有の知」は何かを見極め、この「知の総力戦」のために、「洋ITを使いこなす人」を育てることである。
脳科学者の茂木健一郎氏(日経夕刊08年5月21日;『欧米の知の本丸に迫れず』)によれば、日本の知識人の代表である研究者は専門領域に閉じこもりがちで、「他者」と向き合うことを避けており、ゆがんだ状態におかれている。文系の人は日本語の空間で閉じており、一方の理系は成果を英語で発表するのでグローバリズムの中で戦ってはいるが、「総合的な視点」に乏しい。それは科学界で日本人がレビュー(解説)を書くのが下手と言われるのに通じる。世界で日本人の知的存在感は希薄と言っていい。世界的に評価される知や文化が日本にないわけではないが、アニメや漫画のサブカルチャーに浸って満足している。この様に知の競争で後れを取ることは日本経済にとっても大問題である。現在のインターネット社会は知の総力戦だ。“ブロードキャスト・ユアセルフ(あなた自身を放送しよう)”と掲げるユーチューブ、知のすべてを共有化しようという思想のグーグル。こうしたネット企業には、グーテンベルク以降のメディア史を踏まえ人間の未来を見据える骨太の知性を感じる。同時にビジネスとしても確立している。対する日本のネット企業の構えは小さい。大きな思想を持つ人がおらず相当の格差がつけられている。文系、理系なんて関係なく、ありとあらゆる「総合」の知恵を絞る必要がある。と書かれていた。
もうひとつの記事で、日本の製造業で培った「和魂FA」は如何なるものであったかを尋ね、これからのグローバルの知の戦いを「洋IT」を駆使してどう日本流の良さを出すかを考えるのに参考になる、格好のコラムを紹介したい。
参照:記者のつぶやき(仲森智博)…『技と技術と日本のココロ』
要約すると、“日本は刃物で独ゾーリンゲンに完敗した。”つまり、日本製刃物は評判が良く、欧米人もみやげに買って帰るのに、日本メーカがドイツメーカにしてやられたという話を引用して解説している。工業製品と工芸品の違いをよく理解し、工業製品の差別化をどう考えるかが鍵である。現在繰り広げられている中国製品などの価格攻勢を受け、岐路に立つ「日本製品」、やはり選択肢は二つ、品質に目をつぶってあくまで価格には価格で勝負するのか、別の道を探るのか。もし、別の道を模索するならば、現代まで生き延びてきた工芸品のありようが、私たちに何らかの示唆を与えてくれるのではと思うのである。日本的心情に適った何かを!とある。
以下に注目すべき点を列挙する、
| 01) | 「技術」の定義は、本来はそれを保有する人から引き剥がし他の不特定多数に移転することができ、進化させることがでる。他人でもその上に発明や、進化をさせることができる。技術ベースの工業製品は、進化し続け、陳腐化するとどんどん価格が下がる。 |
| 02) | 「技」の定義は、人と不可分なので伝達が極めて困難である。 技をベースとする工芸品は、時代とともに進化するとは限らない。 |
| 03) | 日本人はテクノロジィー=技術とスキル=技との領域を曖昧にして「技術」と称して、共生させてきた。これからは、どう変えるか? |
| 04) | ドイツ人は、目的とするところが、その時点での効率とか生産性にあるのではなく、未来を見据えた方法論「誰にでも作れるようにすることを優先する」探求にあった。そして、スキルの世界と決別し、テクノロジィーの世界を確立させた。この発想は産業革命を経験した欧米の国々に共通する特性である。 |
| 05) | 日本人は工芸職人が名人として尊敬され、職人技が生き残った。 欧米は、今でもマイスターの称号は残っているが、日本ほど濃厚ではなく、芸術家やデザイナーは尊敬されるが、普通の職人はあまり尊敬されない。 |