技能者の育て上手が、技能継承のコツ
先回のブログで、「日本の製造業、『和魂FA・洋IT』で再生を!」と訴えました。この『和魂FA』は20世紀末まで、日本の製造業の現場を支えてきたのです。お勧め書籍で紹介した、阿川弘之著『大人の見識』によると、近代日本は江戸末期の武士道精神の土壌:『和魂』があったらばこそ、明治維新で西洋文明:『洋才』を日本流に咀嚼し、近代化を成功させたアジアで唯一の民族であった、とあります。この精神文化は、第二次大戦で国は敗れたが、戦中、戦後派の団塊世代に引継がれ高度成長を支えたのです。戦中派を自認する私は、62年、三菱電機の入社式で、社歌を歌ったとき“品質奉仕の三菱電機”とあり、“何と仰々しい!”と吃驚しましたが、あらゆる場面で反芻し、叩き込まれて違和感がなくなりました。他の日本企業も同じような企業理念が掲げられていました。80年頃から、日本の造語“FA”が日常語となり、当初は海外では通じなかったが、何時しか日本の製造力が認められるようになり世界共通語となった。欧米生まれのIndustrial Automation(IA)は、無人・自動化で、“自働化”の現場で働く人の魂は入っていなかったのです。
再び、昔話に戻りますが、私の入社時代は、企業内に“養成工の訓練学校”があり、新入工員をゼロから心・技を鍛えるスパルタ教育をしていました。講師は、養成工出身の幹部工作員の班長、職長、工師などが当たっていました。社内で技能オリンピックの候補を選抜し、全国大会へ出場する制度もありました。この様に、技術を支える技能者の大切さが認識され、技能の人づくりを高揚するコトづくりが確かりしていました。工作部門の技能幹部は権威があり、私たち新米の技術者も、確りシゴかれ、鍛えられ、技術者が現場を知る教育も行われました。
しかし、今日の日本の製造業では、団塊世代が退き、少子化で新人雇用もままならず、派遣社員で補充するのでは、折角培ってきたFAから『和魂』は風化してしまいます。先細りになる『和魂FA』を今一度蘇らせ、『洋IT』化に取り組まないと、アジアの世界工場での日本のリーダシップは保てません。さらに、従来のIT導入の域で留まっているようではアジアの世界工場も迷走し、日本と共に悲惨なことになります。
この様な状況化で、『和魂FA・洋IT』での再生をどの様に行えばよいかを考えて見たいと思います。
日経の5月18日の“今を読み解く”のコラムに、LCA大学院大学の副学長 森田正規氏、「技術継承のカギは個別性; 時代にあった自社流で」の見出しで、曰く、“日本の技術を支える技能の継承は重大な課題である。かつて産業の空洞化の危機が言われたが、大きな問題の一つが、技能の継承が出来なくなることであった。その問題の一つは、技能には、暗黙知と形式知があり、技能を継承するために、出来る限り形式知化して文章やデータ化して伝えようという試みがあったが、外国に流出し易いという重大な問題を抱えている。業種にもよるが、電気産業の半導体、薄型TV、AV機器などは強さを失っている、これには技能にも深いかかわりがある。もう一つは、技能には、‘身体制御能力’と‘問題解決能力’があるとの認識が重要である。優れた技能者は、腕で覚えた能力と頭を使って状況を巧みに適応する二つの能力を持っている。これも業種によって比重が異なるので一般論では論じることが出来ず、業種によって具体的に考えなければならない。”
そして、結論として、「技能者の育て上手が、まさしく技能の継承のコツ」である。技能はひたすらよく見て、‘盗むものだ’は間違いであり、良い職人は育て上手でなければならず、また、学ぶ側の真剣に学ぶ気持ちがあってこそ応えるのだと説いている。
技術を支える技能こそ、日本のものづくり力の源泉である。これを如何に再生するかが益々重要である。技能には時代と共に変わる面があり、業種によっても重要性が異なる、形式知化できる程度も異なり、身体制御から問題解決へと比重も変わってくる。
そこで、自分の業種での技能はいったいこの先どうなるのかを深く考え、正しく把握することが、基本的に重要である、と書かれている。
私の従来の認識は、技能の継承は、ITを活用して効率的に形式知化するという考えであった。ここで、私の認識を新たにしたことは、そうではなく、技術を支える技能は何かを熟考し、それに対応し進化させなければならない。「洋IT」を駆使して「人を育てるコトづくり」であった。