製品価値の再定義で第3の生産革新
私はこのブログで、「製造現場の視点で、日本の製造業のグローバル化への変革」 をテーマとして、これまで書いているつもりでいましたが、海外生産を進めても新興国の工業化が進むと、所詮、技術は追いつかれ、コスト競争に敗れる。一方の、高機能化・差別化を追求しても、市場の大きさは国内主体となり規模は望めない。さらに、少子高齢化で本来の強さであった現場力を支える人材は質・量ともに尻つぼみとなる、等々。なんとなく自分の展望に閉塞感を抱いておりました。
そんな心境のなかで、e-f@ctoryBIZ-Strategyのサイトの、慶應義塾大学 大学院経営管理研究科 教授 許斐 義信 氏の論文『新たな技術立脚型企業への変革(全4回)』の掲載に出会いました。
当初は、経済学者の視点から企業のグローバル化のための財務戦略のあり方について書かれているものと、興味半ばで読んでおりました。読み進むにつれて引き込まれていきました。それは、日本企業の国際化に対し、“為替変動への対応策は決して生産拠点の配置変更だけではない。その功罪を幅広い視点から評価することや為替変動に対応して如何に機敏に対応していくのか、というテーマが置き去りにされてきた。”そして、“企業内部では為替を扱う財務部門と事業部門との共同作業による為替変動への耐震構造を構築できるか否か、という組織力の問題、あるいは組織力によるリスクヘッジを情報武装で勝負できているか?”とあり、「財務部門と事業部門との共同作業の欠如」に衝撃をうけました。自分の経験から、財務とか経理部門は、事業部門の実態を移す鏡のようなもので、グローバル戦略とは無縁と見ておりました。
さらに、“現状以上に生産コスト(製造原価)を引き下げるには、過去に行なってきた原価低減の手法は適用できません。生産システムの装置産業化が進んできていることに起因しており、原価低減の可能性が高い領域は生産機械に係る減価償却費です。”と、明言されています。
自分のこれまでの発想は、未だに現場改善をミリミリと積重ねる直接費の低減策の域を脱していなかったと反省しました。「グローバルな戦いは、財務の視点も含め、企業の総力戦」であることに気づかされました。
そして、第4回の『世界に通用する新たな生産システムへの改革提案』に至り、‘目から鱗がとれた’様な、思いがしました。
“グローバルな視点での生産革新の考え方と、自動化など機械化が進み固定資産が増大している生産システムを、如何にして生産改革に繋げるのか、この2点をベースとした、「新たな生産革命の方法論」ある。”と、許斐教授は述べ、日本の製造業の歴史的流れは、戦後、米国からIEを学び、大量生産手法をものにした時代、85年以降、ロボット化・無人化で、生産システムの装置産業化が進んだ時代を経て、それに次ぐ、この生産改革の挑戦を、『第3の生産革新』と位置づけています。詳細は、この論文に書かれている内容を読んでください。
以下に、この『第3の生産革新』について、私の理解と私見を述べます。
日本は、85年以降の『第2の生産革命』時代では、人手不足と賃金高騰対策として、人手を代替する製造装置の自動化・無人化を目指し、益々進化しました。その過程で、人手よりも生産性・品質が良好であることが実証され、さらには、この間に進歩を遂げたFA・メカトロ技術を応用し、半導体・液晶製造装置、各種製品の製造ラインを開発しました。これらは人手の技能では実現できない様な、精密作業をこなすようになりました。しかしその時代は、それ以前に入社した豊富で、良質な団塊世代のベテラン社員が中核となり、これらの製造システムの開発と、使いこなしで、生産性を高め、相次ぐ市場の需要拡大に対応し、製造業の黄金時代を築きました。その時代は、量的拡大に支えられ、高額な製造設備投資の回収は順調に進み、固定費という意識はされませんでした。
そして、『第3の生産革新』の序幕は、バブル崩壊と、円の高騰(¥85/$)で始まりました。国内需要の低迷で輸出を目指しました。為替変動対策として生産拠点をアジア新興国等に移しましたが、多くの製造企業が今日なお、グローバル化の自己撞着に陥っています。しかしながら、論文中のホンダの例とか、新聞にトヨタTPSの布教に30万人研修など、報道され、先進企業の新たな第3の生産革新の挑戦が始まっています。
論文の結語として、“グローバルな競争に勝つことは価格競争に対抗して品質で競争することではなく、夫々の国々の顧客の価値に合わせた製品を提供できるか否かの競争なのです。”とあります。
製造現場の身近な問題で云えば、夫々の国のコストに合うモノづくりをするとは、人と機械設備との協調作業で、時間当たりの付加価値を極大化することです。過って、日本が学んだIE(生産技術)を進化させ、人がモチベーションを高めて効率よく作業する仕掛けを用意すること、機械設備は投資回収を速めるため、外段取り、治工具などを工夫して、中核となる高額製造設備の有効稼動率を最大化することです。
これは、本来、日本の「得意技」でした、少子高齢化社会のなかで再チャレンジ出来るかどうかが鍵です。