躍進企業に学ぶ究極の『見える化』 - Ⅰ
日経コンピュータが、表題の特集を組んでいる。「ここまでやるか」と思えるほど,ITを活用し業務を徹底的に『見える化』することで,売り上げや利益を伸ばしている中堅・中小企業の事例を掲載している。いずれの社長も、“システムベンダーに頼んだが、自分の思いを理解し、システム提案をしてくれない!”と、自ら陣頭指揮して独自の究極の『見える化』システムを開発した。それを使いこなし、業績を躍進させている。
注)個々の会社のサマリーは本文に記載していますが、詳細は、躍進企業に学ぶ究極の「見える化」に掲載されています。
今回のブログは、『FA-IT』の強化が必要とされている製造業と、その対応に関心を持たれているシステムベンダーの方々が、それぞれの立場で具体的課題に気づき、解決への手掛かりを掴んで頂ければと、7社の事例を選びました。
各社の社長の『見える化』への思いは尋常ではなく、その発言は示唆に富んでいます。社長の理念と行動には、現実を踏まえた生々しいものがあり、多くのヒントを垣間見ることが出来ます。
前回と前々回ブログのテーマ:“中小企業向け『FA-IT』ツールの要件 -Ⅰ,Ⅱ”と関連づけて社長の生の発言を収録し、コメントします。
Ⅰ)「製造現場の‘速さ’を支援するIT化」に関する社長の発言
以下の①~④の事例は、製造現場の『見える化』を進めながら、要件 -Ⅰで私が述べた‘速さ’のみならず、いわば‘深さ’としての、組織力を高める成果を獲得し、したたかに営業・サービスの質の向上へと繋げ、顧客を拡大し、業績を躍進させています。これは、私の前回のブログで、‘速さ’だけの視点では、狭かったと反省しています。
①トコトン分解・計測する:秒単位でバーナー点火時間を計測 - 山陽鉄工
IT活用による業務の合理化・省力化が一巡した今、さらなる競争力強化のために、改めて現場に潜む問題を見つけ出し、サービスの品質を高めるためとし、社長は、“切断・溶接の加工料は「長さ」や「加工時間」で決まるのが基本だ。どうせ見るなら、収益の源泉となる溶接・切断の長さと時間を徹底的に計測しようと考えた。作業品質やトラブルの有無も、即座に察知できる利点もある。作業担当者が早く仕事を完了させようと作業に集中すると、ガスバーナーの点火時間が短くなり標準時間を日々短縮することが出来る。逆に、標準時間より長く点火している場合は、何らかのトラブルが起きている可能性が高い。この場合、社長や工場長に直ちに警報を通知することで、早めに問題を解決できる。”と説明する。
②トコトン分解・計測する:ビルの清掃工程を分単位に分解 - 宮豪
オフィスや店舗の床は1平米1分、トイレは同5分ーー。清掃の作業工程を細かく分解し、工程ごとの標準時間を『見える化』したことで、作業効率を約2倍に高めた会社である。
社長は曰く、“工程管理システム「BOIS」を開発した。清掃担当者一人ひとりにPDA(携帯情報端末)を配布し、最適な作業の流れや標準時間の指示と、実際の作業時間や結果を収集している。作業工程の区切りで、PDAを取り出し、「作業完了」ボタンをクリックすると、次の作業内容と標準時間が画面に表示される。これを繰り返せば、「初めて清掃を担当する人でも、最適な流れで清掃できる。”そして、“時間を収集するのは標準時間を日々見直すためだ。清掃担当者の平均スキルが変われば、標準時間も変わるはず。理想を押しつけるだけでは、実効性は上がらない。結果を見るだけでなく、改善して初めて『見える化』する意味がある。”さらに、“業務の『見える化』は、見る側となる管理職や本社の都合だけで推進すると、必ず破綻する。見られる側となる社員の心理に配慮した仕組み作りが不可欠である。”と、指摘する。
③トコトン分解・計測する:「一式○○円」の業界慣習を壊す - アキュラホーム
間取りや外観のデザインを自由に決められる注文住宅の価格は、坪単価40万~80万円が相場だ。一方、アキュラホームは同21万円から手掛けている。圧倒的なコスト競争力で同社の売上高はこの5年で約5倍にまで成長した。この成長を支えているのが、住宅建築コストの『見える化』だ。その心臓部は、住宅建設の工数やコストなど約4500種類の基礎データと、約300パターンの積算データを蓄積したシミュレーション・システム「アキュラシステム」である。
社長は曰く、“一式いくらの世界では、無駄なコストがあるかどうか分からない。住宅建築の工程やコストの構造が細かく見えれば、どこに無駄があるかが分かるし、顧客への説明責任もきちんと果たせる。”
中学卒業後、大工の道を歩んできた社長は、1981年独立を契機に、住宅建設の工程や工数、コストなどを管理するデータベース作りに取り組んだ。 データの精度を上げるため、今でも社長自身が建築現場に足を運ぶ。ノートとストップウォッチを持ち、「柱を立てるには何人必要か」「柱のカンナがけは何分かかるか」など、細かくデータを計測していく。“今日見たものが、明日も同じとは限らない。『見える化』を持続させるには、現場に足を運ぶことが大切だ”と、社長は強調する。
④情報を目に飛び込ませる:入力はデジタル、出力はアナログ - 山崎文栄堂
業務の流れや内容を細かく分解・計測して『見える化』しても、それらの情報を競争力強化のために活用できなければ意味がない。経営層や管理職はもちろんのこと、業務に携わっている社員一人ひとりに業務品質や生産性を高める「気づき」を与えるには、「見せる」工夫もまた不可欠となる。同社が取り組む『見える化』のポイントは、パソコンの中だけに、データをため込まないことだ。定期的にデータを集計し、模造紙に描いてオフィス内に張り出す。“顔を上げたとき、情報が目に飛び込んでくるようにすることが重要。ファイルを共有しても、それが見られなければ意味がない。これが厳しい現実を「楽しく」見せるがコツだ。”と、社長はアナログな『見える化』の利点を強調する。
以上が、Ⅰ)製造現場の改善を主体とした事例ですが、もう一つの、Ⅱ)営業・サービス視点での「グローバルな顧客対応の‘広さ’と‘速さ’を克服するIT化」について、社長が目指す『見える化』を、次回の、躍進企業に学ぶ究極の『見える化』-Ⅱとして続けます。