『コトづくり、人づくり』の‘コト’とは?

7月21日に開催された、私の所属するワクコンサルティング㈱の研修会に出席しました。そこで、「ものコトづくり 製造業のイノベーション」の提唱者で、この本の著者である、IBMコンサルティングサービス㈱ 東 正則氏の講演を聴きました。
“デジタル時代の「ものコトづくり」革新”の説明がありました。「もの」は製品、部材など、形があるので分り易いが、「コト」とは、サービス、ソリューション、ソフトウェア、システム(4っのS)の、無形なものに焦点を当て、洞察し本質化(抽象化)するのが「コト」づくりである。そして、この両方の“づくり”の相乗効果を、ITを駆使して実現し、その過程で「人づくり」が行われ、一段と飛躍したモノづくりの革新へ、昇華させることができる、とありました。
 私は概念的に、「コト」の内容を理解しましたが、“革新への昇華”というプロセスが今ひとつ納得できず、しっくりしません。そこで具体例で探求してみたいと、事例を探していました。7月のITproの事例データベースで、面白い事例に出会いました。
それは、サンスター:「装置産業でも“1個生産”!?トヨタ流改革で在庫4分の1に」です。

トヨタ方式は、自動車のような組立工場に適用されるものと思い勝ちですが、これはサンスターのような装置産業へも適用されている事例です。同社は、2002年7月からトヨタ生産方式の考え方に基づいて、サンスター流の生産方式:SPS(サンスター・プロダクション・システム)に取り組んできた、とあります。
 この活動のなかで、「コトづくり、ひとづくり」がどのように、トヨタ流の本質を抽象化して、サンスター流SPSが造られていったか?
IBMの東正則氏の云われる「コト」の中味である(4っのS)を切り口にして検証したいと思います。
 まず、この(4っのS)の「コト」を私流の日本語に言い換えてみますと、
S1) サービスとは: 相手に好感を与え、満足度を向上させるコト
S2) ソリューションとは: 仕事の仕組、仕掛けを革新するコト
S3) ソフトウェアとは: 業務知識、製造知恵・スキル、ロジック、プログラム手順の内容を具現化するコト
S4) システムとは: S1~S3のコトを実行する体制構築、インフラの革新を、ITを活用してイノベーションを図るコト、となります。

この記事に記載されているサンスターのSPSの流れを辿り、「コトづくり、人づくり」を見てみたいと思います。
1) 生産管理は、以前のサンスターの生産方式;1回の生産量を極力増やし「製造効率を優先する生産文化」から、‘トヨタの1個流し’の本質を洞察して抽象化し、「サンスター流のタンク1個分の‘こまめ’生産文化」の仕事の仕組(S2:ソリューション)へ、大革新を行って来ました。
 この‘こまめ’生産革新を進めるには、製造現場の設備、人の役割・配置を変え、倉庫の在庫管理方式を変え、営業活動、営業情報のキメ細かさと鮮度を上げなければなりません。これらの変革要件を満たす(S4:システムを設計し、S3:ソフトウェアを開発する)コトづくりが行われ、部門限定のスモールスタートから順次適用拡大し、長中期改革へと展開されて来ました。
2) 一方で、‘こまめ’ 生産に切り替えると、従来生産では顕在化していなかった製品の品質不安定とか、製造ラインの段取り替えのトラブル、設備故障などで、納期遅れが頻発する。或いは、新製品の短期立上げが必要となり、製品とその製造設備の立上げの短縮、早期安定稼動の要求が高まる。この様な事態への改善活動が‘こまめ生産’を通常化させる過程で行われます。これまでに現場で培われてきた経験・ノーハウなどの知恵の活用とか、現在生産中の品質、設備不良の予知の検出機能を付加し、そのデータの活用法などの革新が求められ、ソフトウェア(S3)を新規開発する必要があります。それを必要な人が何時でも、何処からでも活用し、対処できる品質管理・保全管理システム(S4)のコトづくりが、1)の生産管理と同時進行で実現してきました。
3) 社外サービス(S1)は、SPSの初期段階では従来の営業とあまり変わらず問題化しない場合もありますが、本格化するにつれ、顧客への納期、商品への安心感をサポートするカスタマーサポートが必要になり、システム(S4)と、ソフトウェア(S3)開発のコトづくりが行われてきました。
 また、社内サービス(S1)としては、今年4月より、SPSの第2段階に入りますと、需要予測とか、製販の一元管理ができる統合業務システム(見える化)ヘの進化が必要です。また、他部門への水平展開のため、教育ツールなどにITの活用の(S3、4)のコトづくりが予想されます。

以上から、「コトづくり」は、「ものづくり」と「人づくり」の肝心要であり、相乗効果で進化することがご理解頂けたでしょうか?

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