FA-IT-Researchでは、製造業の現場のキーワードである『見える化』、そして、 そのアキレス腱となる『FA-IT交差点』にスポットを当て、皆様との議論の絆、 知恵の輪を広げていきたいと思います。

2010年03月15日

「アジアの共生」を導く日本の底力とは?(続)

(前回3月8日更新のブログからつづく)

ⅲ) 今井賢一氏の記述を続けます―――;
“こうした中国のダイナミズムの勃興を地政学的視座で眺めると、世界の中心都市としての‘東京の機能’を再評価すべきである。日本における東京一極集中の弊害は、過去の遅れた部分、死滅した部分であり、現在の危機下で新たな見方をして、実り多き部分、未来を孕み生き生きした部分に注目したい。”
さらに、“多様な『技術・文化変換装置』としての東京のもつ優位性である。つまり、世界のあらゆるハード・ソフトの技術と文化を吸収し、修正し、複製を越えて再創造して、何か違うものに変換して再び世界に戻す能力にかけては、東京にかなう都市は存在しないのではなかろうか。”ここで重要とされるのは、“そうした技術・文化の変換作業が、エリートの設計者や技術者だけではなく、町の熟練工や職人、また「オタク」とよばれる若者、そして、高齢者の経験知などの雑多で多様な能力に支えられていることである。”
シュンペータは、“資本主義は本来、共生するはずの職人階層まで追放してしまった。”と嘆いたが、日本には『草の根』的な力を残していることが強みである。

もちろん東京で夢破れた人々、「既得権の暴力」で仕事を失った人々など、「空しい」部分、「死滅した」部分にも目を向ける必要がある。そこは政治の責任において、それらの人々を救う手段を整備すべきである。
同時に、東京と地方をつなぎ彼らのために仕事をつくっている『草の根』的な社会的企業家達が増加していることも注目したい。
今井先生もこの種の財団・研究所の活動に関わっておられるとのことで、“彼らの「底力」に希望を見出すことが多い。”とされている。
“この様な多様な観点を含めて『技術・文化変換装置』を日本の真の底力とするには、東京の奥に存在する京都・奈良に『歴史に培われた本物』があると云う自信を取り戻すべきであろう。” 『歴史に培われた本物』とは、枯山水の例でいえば、みずみずしさを感じさせるため、あえて水を抜いてしまうといった情報凝縮力である。そこにはデジタル情報の蓄積ではなしえない「礎石」のような力がある。重要なことは、そうした「引き算」の文化は日本独特ではなく、世界に通じる普遍性をもっていることだ。世界で最も注目されているデザイン会社米IDEOは、本質的なものを生かすには、ハイレベルな要素技術であってもあえて削ぎ落とす戦略をとっているのと、相通ずるところがある。東京中心の「技術・文化変換装置」は、現代性がもつ過剰な詰め込み、つまり‘足し算’の性質をもつ。そこに歴史に培われた‘引き算’の文化を加え、その両者の相互作用を基盤として、我々の未来をしなやかに創っていきたい。

以上が、上記の日経・経済教室に掲載された、今井賢一氏の記述の要約であるが、私としては、なかなか含蓄のある記述に感じ入り、割愛するところが少なく、かなり原文を転載することになってしまった。

以下に、私の所感として小文をまとめてみました。
今井先生から、東京一極集中の弊害が囁かれる中で、東京の機能を再評価する「技術・文化変換装置」論が出てきたのに対し、私は、現在の日本の経済活動が東京一極集中し、東京vs.地方の格差が拡大するとともに、さらに首都圏においても貧富の差が拡大する中で、 “東京の機能を再評価するとは?”どう云う事なのかと、疑問が出てきました。

先々回;2月15日のブログで、“従来のすべてを‘金’本位で評価する「産業資本主義」の行き詰まりを、「カネ」を越えた「知」の価値観を醸しだす‘人材’本位の「企業文化資本」へ切り替え移行しなければならない。”と、論議しましたが、この‘人材’を東京に集中するとは、企業に例えると、頭デッカチの本社を造るのと同じ様なことではないかと、早トチリし、前段の話とどう折り合いをつけるか、しばし悩みました。そこで考え、こう説明すると理解が得られると納得しました。

;即ち‐‐「技術・文化変換装置」とは、あくまでも‘入れ物’ であり、謂わば「コトづくり」の仕掛けとしてのシステムのコトです。
参照;お勧め書籍:『ものコトづくり 製造業のイノベーション』
その装置にINPUTされるのは多様な「知」をもった人々です。この変換装置の中で、個々の人がもつ「知」が相互触発して、新しい「知」が産まれ OUTPUTされるのです。その「知」を獲得した人々は夫々の地域(海外も含む)へもどり、その「知」を展開する。ここで得られる「知」は、インターネットや、コンピュータの無機質なデータの付き合わせで得られる知識とは異なり、‘志’をもった多様な人間同士の往来と接触によって創発される「本物の知恵」であると云う事です。東京は、日本独特の文化に根付き、規模的にも、歴史的にも、現在のグローバル地政学的見地からも、優れた「技術・文化変換装置」となり得ると云う事です。

是非ともそうすべきだと今井先生は云われています。

2010年03月08日

「アジアの共生」を導く日本の底力とは?

去る2月15日更新のブログ;『事例から学ぶ「企業文化資本」の勃興』で引用した記事;日本の電力会社連合がベトナム電力庁へ応札する‘原発事例’が、ロシアに敗退したと、先月2月9日の新聞で報じられた。かくも“原発大国といわれる日本の企業連合”が脆いものかと、吃驚仰天した。しかも、当時、ベトナムのグエン・タン・ズン首相が、日本経団連との会合で、“原発大国である日本の企業連合に期待したい”と、技術力と運営、資金、人材育成の4点の協力を提示し、日本の‘総合力’に熱い視線を送っていたのである。そして、国を挙げて原子力外交に駆け回るフランスや韓国の動きに対し、後れを取っているとの一抹の懸念があると書かれていたものの、当時の話題にもなかったロシアの国営原子力企業「ロスアトム」が、受注をさらって行った。その記事で、ロシアは、ベトナムと中国との間で南シナ海の領有権を巡る交渉が難航している点に着目し、日仏韓と全く異なる手法でベトナムに急接近し、“原発と武器供与をパッケージにして提案した”とみられている。

一方の日本の電力会社連合は、‘官民一体のオールジャパン体制’で臨んでいるにも拘わらず敗退し、“採算を度外視した安値提示と、政府の軍事協力など、何でもありだ。”と苛立っている。

私は、軽率にも、今日なお、世界の軍事対立のはざまで翻弄されている事例を、『日本の製造業の「企業文化資本」の勃興』に供したことは、はなはだ不適切であったと反省します。これ程ではなくても、政府が関与し自国の産業を有利に海外へ展開する事例は、世界で横行していることは否めません。しかし、我々はこの様なその場限りの外交・政治的手法に一喜一憂せず、‘負けるが勝ち’とし、世界に本物で貢献できる技術と人材を養うことを怠りなく行いたいものだと思います。

日本のものづくりは、アジアを中心とした新興国に対し、むしろ、『草の根』的な底力で、経済の共存共栄を図るべきと考えます。
下記に、この趣旨に合致する論説を引用し、考え方を進化させたいと思います。

日経新聞【経済教室】2010年1月4日;《日本の活路 2010 危機の先へ -1》
≪市場いかし再生の道拓け≫ [産業・文化の底力発揮]  歴史と東京の強み、再評価
スタンフォード大学 名誉教授 今井 賢一氏

<ポイント> 
ⅰ) 悲観に堕さず、しなやかに未来の展望描け
ⅱ) 貧困市場や中国のダイナミズム吸収を
ⅲ) 東京は技術・文化の変換能力で追従許さず


ⅰ) 新春を迎え、日本経済にとっては、まさに「失われた20年」であり、崩壊や亡国の兆しの論調をしばしば耳にする。しかし「崩壊」は虚飾と偽善を削ぎ落とし、矛盾との対立を鮮明する動的な緊張の中で、次の展望を拓く決断的知識が生み出される。この動的な過程に注目しながら、今こそ日本の産業と文化のもつ「底力」を再考し、しなやかに未来の展望描きたい。

ⅱ) 現在の日本にとって一番大事なのは、内向き経済を脱し、どう世界経済と関わるかである。惹起するグローバル市場のダイナミズムと一体化し、生き生きとした部分とネットワークを組んでいくことである。
世界には国や地域間で所得格差による人口階層が存在し、開放経済の下では、各階層の賃金が均等化しようとする圧力が働き、各国の経済規模もピラミッド型の相似形BOP(=ボトム・オブ・ピラミッド)になろうとする。所得格差を真に縮小するには、各層の底辺にあるBOP市場でのイノベーションが最重要課題である。今、その人口の多い貧困市場にも未来を孕む部分が生まれている。
シュンペーター学派を引き継いだ米・ニューヨ-ク大学のI・カズナー名誉教授は、“市場とは「発見を生み出すダイナミックな過程」” であると定義し、そのダイナミズムを実現していく最も重要な機能として企業者の「気づき」を強調している。今まさに必要なのは、この「気づきに基づく状況に適合したイノベーション」である。
日本が重点的に取り組むべきは、環境問題を通じての技術の協力関係である。その相手は、目覚める中間層のBOPである。特に中国は、開放経済の進展によるダイナミズムが活発になっている。その中心とみなされる「朱江デルタ」地域は、地政学的にみてもトップレベルの港湾・空港をもち、アジア情報ネットワークの拠点としても、有望である。
(以下、次回3月15日更新へ続く)

2010年02月22日

「アジアの共生」の肝は人づくりの連鎖と循環

前回ブログ;事例から学ぶ「企業文化資本」の勃興の結語として、“日本流を世界で受け入れられるためには、様々な限界を内包していると見なければならない。21世紀は「知恵」の時代と云われる。この観点から、大きな視野でレビューすれば、新しく進む道が見えてくる”と結語した。即ち、ここで云う観点とは、企業の人材が具える「知恵」を、グローバルな舞台で、如何に磨き、活用し、「企業文化資本」として競争力を高める経営サイクルに乗せ得るかどうかに懸かっている。前回掲げた事例から多くのヒントを得ることが出来ると思われる。

そして、事業戦略の策定に当たっては、5W1H(What or Whoから始まるWhere,When,Which,How)で計画を練り、着実に推進しなければならない。従来の資本主義経営では、‘Who’は5Wの計画の具体化の段階で決められ、後位に位置付けられていたが、これからの「企業文化資本」の時代の事業戦略は、人材(Who)と、何の事業(What)の何れかを、第一位、二位で策定しなければならない。

しかし、このWhat or Whoの決定は、企業固有の選択であるため、これ以上の言及はさておき、次の‘Where’が、‘地の利’としてどこから切り込んでいくかが、経営として重要なランクにある。これまでの論説とか記事から既に自明と思われるが、海外ユーザ、日本メーカ両方からWin-Winを期待されるのは、やはり「アジアとの共生」である。

そこで、朝日新聞 1月4日:社説 [アジアとの共生] 《手携え人づくりの大循環を》
の記事を引用し、以下に、[アジアとの共生] のあり方を考えたい。
幕を開けた2010年代は、世界的な構造変化が加速する。経済の分野では、米国一極集中から多極化へ、と云ううねりが起った。米国の過剰消費に世界中がもたれ掛ればなんとかなる時代は終わった。世界大恐慌以来の経済危機を克服する上で、協調は不可欠ではあるが、同時に各国が内需を振興し、自立的な発展を進めることが前提となる。特に、輸出と貯蓄にいそしんできたアジアなどの新興国が“豊かでエコで安心・安全な社会”をどう築くか。世界の安全と調和はそこにある。

一方、日本経済は生き残りをかけて、アジアへの融合が求められている。アジアの需要を、ただ取り込むという発想ではなく、近隣諸国の豊かな社会づくりに寄与し、結果として生れる市場の果実を得るようにしなければならない。すなわち、たんに商品やサービスを売るのではなく、現地に溶け込んだ商品・販路づくりや人づくりが欠かせない。現地の発展に日本のどんな資源が活かせるか、志を高く持ち、考え抜く人材を一人でも多く育てることが必要である。

すでに、多くの企業がアジア向け製品開発に走りだしているが、求められているのは必ずしも最先端の技術ではなく、むしろ蓄積されたものを適切に組み合わせる、『あり合わせ力』が問われている。例えば、日本の大手電機メーカの研究所には、韓国メーカなどが“すぐ製品化したい”と思う成果がたくさん蓄積されていると云う。従って、日本の産業は、持てる蓄積をアジアや世界の目線で認識し直すことが大切である。

この発想転換の勘どころの例を挙げれば、
01)「枯れた技術の水平思考」
任天堂のゲームづくりを率いる宮本専務の言を借りれば、成功の秘訣は、社員の頭脳に、失敗を含めゲームづくりの経験と知識が詰まっている。世の変化に応じて過去の蓄積から使える要素を引き出し、組み合わせて成功を収めてきたのだ、と云う。

02)需要と供給の微妙な食い違いへの「気づき」
米IBMはコンピュータを学術計算に使うという固定観念にとらわれず、事務処理に使うことを思いつき、巨大企業になった。とかくイノベーションには、発明が欠かせないと思われがちであるが、視野を広げて観ることにより、需要と供給の微妙な食い違いがあることを、いち早く「気づき」、転換を図ったことで、大成功がもたらされた。

03)新たな光を当ててみるべきものは企業だけではない
日本の地域に眠る「緑」、「水」、「海」などの自然の幸、独自の伝統文化や安全な社会といったソフトパワーにも再評価を。

等など、孫子の兵法に学ぶまでもなく、顧客と市場、社会を知り、自分を知ることこそが王道である。日本の再出発には、持てる資産を自覚する『ニッポン総棚卸』が求められる。

企業でも地域でも、人材が鍵を握っている。アジアが必要とする資源の情報を吸い上げる人、日本の資源で役立ちそうなものを提案する人などを連携させることで、人を養成し、アジアに大事なお客さん、かけがえのないパートナーがいると云う関係を網の目の様に広げていくことである。

日本の人材がアジアに出るだけではいけない。日本もアジアに開かれた社会に脱皮する必要がある。そして、アジアの人々と手を携え、大きな人づくりの連鎖と循環を生み出し、共生と新たな成長への道を切り拓きたい。

2010年02月15日

事例から学ぶ「企業文化資本」の勃興

今年の正月あけの新聞などの論説では、“21世紀の資本主義は、これまでの「全てをカネで換算」する資本主義の行き詰まりを修正し、これからは、「本物の価値」「目に見えない価値」という「カネ」を越えた価値観を付加してバランスを取ることにより、資本主義を進化させなければならない。いよいよ、日本の産業界はアジアに出て、この「資本主義の進化」を主導し、アジア経済圏のインフラ力を高める中核的存在とならなければならない。そのためには、‘日本本来の良さ’を認識し、それを広めるグローバル人材の育成が欠かせない。”とする論調で賑わった。
これらの論調を総括し、分りやすくまとめられた解説記事を見つけた。

(参照)お勧め記事;
立田博司のニッポンの本流と奔流;
10年1月12日  『「企業文化資本」の勃興と「産業資本」の低下』

この記事は、『お勧め記事』に掲載したので、この内容の言及は省略し、これ以外の正月あけの関連記事を借用し、具体的な事例の要約とポイント(要諦、注目すべき事柄)を以下に記載する。

01)日経 1月3日:ニッポン復活の10年 ②

《人材ハブ へ若者磨く》

菱刈事例の要約;鹿児島県伊佐市にある菱刈鉱山〈住友金属鉱山保有の金鉱山〉、日本有数の商業鉱山ではあるが、世界的に資源争奪が激化し、同社も海外権益を増やそうとしている。だが、資源メジャーの様に資金力で技術者を集めることはできない。そこで考えたのが、「菱刈は人づくりの場として20年間使う」戦略とした。菱刈を延命させ、世界に通用する日本流の技を育てる。技術者の卵は10人。英語、スペイン語をたたき込み海外へ送り出す。すでにアラスカの鉱山などで卒業生が腕を振っている。
ポイント;日本の強みは教育にある。企業も技術伝承や人材育成に手間を惜しまない。しかし、近年、日本からは傑出した起業家の輩出が途絶えているが、それは必ずしも人材不足を意味していない。日本の本来の競争力は、‘普通の人’の能力の高さにある。現場を知る有能な人材の輩出は、この日本流経営風土にあることを自覚し、人材育成に臨むべきである。
日本は、人を育てる力をどう保ち、高めていくかが課題である。アジアは人材争奪戦を繰り広げており、人の力が国の競争力にかかわる時代となっており、国境の内側でしのぎを削る一国経済の時代は過去のものとなった。人口が減る日本はなおさらである。
世界と共に人材を育てる戦術が必要であり、その中心にある企業の「育てる力」は日本の強さである。我が国に不足していたものがあるとすれば、若者が世界と切磋琢磨する土壌が必要である。海外企業も日本の人材に目を付けている。日本は、日本人のみならず、外国人も受け入れ育成し、その人材をグローバルに送り込み、循環させる「人材ハブ」となることを目指すべきである。
日本は良質な市場が大きいだけでなく、世界最高速の通信や交通などが簡単に手に入る極めて優れた環境にある。日本を起点に人材が世界に往来する――。そんな「人材ハブ」の回廊を開けないか。
世界に「日本人求む」と云わせたい。日本は、世界に人材を供給し、世界から人材を集める。そこで、新しい人材が生まれ、新しい発想で事業を興す。これから10年、日本にそんな人材還流の足がかりができれば、人口が縮んでも、未来は縮まない。将に、菱刈金山の事例は、金本位制から人材本位制への移行の先駆けである。

02)日経 1月3日:ニッポン復活の10年 ④

《インフラ力をアジアへ》

水処理事例の要約;神奈川県川崎市が32年ぶりに上下水道の「拡張」に携わる。市内ではなく、南へ7000km、豪州・ブルスペーン市ヘ、水道技術を輸出することになった。渇水に直面するブリスベーンはダムの貯水率はわずか25%であった。新たな宅地開発に当たって決めたのが、日本が持つ循環型水システムである。日本製プラントを採用し、その運営ノウハウを川崎市が提供することになった。
“川崎市での経験から貢献できることがたくさんある。”昨年11月、川崎市水道局工務部の2人のスタッフが現地に降り立った感想である。
・気候や住民の生活パターンを予測して取水と配水を無駄なく調節する。
・ダム湖周辺の緑地化などで、水質改善策。
・水道管の漏水を耳で聞き分ける48人のプロが育っている。
等々、自治体はノウハウの固まりである。
ポイント; 2025年に100兆円と云われる世界の水ビジネス、これまで、欧州の民間大手がプラント建設から運営まで請け負うのに、日本は海水淡水化技術など高い技術を持ちながら競り負けてきた。しかし、昨今では、官民が手を携える「チーム日本」は、北九州市は中国へ、大阪市はベトナムへと、他の自治体も動きだしている。

原発事例の要約;日本は過去10年、自国内で原発をつくり続けてきた唯一の先進国である。原発大国日本が地震国で磨いた技術は安全の補強剤である。ところが海外事業となると、国を挙げて原子力外交に駆け回るフランスや韓国に後れを取っている。世界は原発の建設ラッシュ、将来構想分を含めれば、稼動中の400基強が倍増する。
12月、ベトナム首相が日本経団連との会合で、“原発大国である日本の企業連合に期待したい”と、原発導入を決めたばかりの同国は、技術力と運営、資金や人材育成まで、日本の総合力に熱い視線を送った。日本の企業連合に期待されているのだ。
ポイント;私の推察では、日本の原子力3社がお互いに競り合い、ベトナム首相は困惑しての発言とも見受けられる。日本メーカは過去、国内の電力会社を客先として競い合ってきたため、アジアの新興国相手のインフラ事業の対応には不慣れで、国内の延長で3社競り合って対応したのではないかと思われる。この問題は、電力以外も同じ見方がされる共通問題である。これからは新興国ユーザの立場に立って、新たな企業連合の仕組みを確立しなければならない。
東大教授の田中知氏が、「内向き志向を捨てて‘オール日本’で海外に貢献することが、国内の技術向上や人材育成つながる循環を生む。」とコメントされ、是非ともこれからの日本は、「企業文化資本」の時代に向け、人材中心を念頭にひと皮むけなければならない。

交通システム・他公共インフラ事例の要約
日本の交通システムは、海岸線と山地の入り組む国土で、改善を積み重ねてきた運行実績がある。同じGNPを生むのに消費する交通エネルギー量は欧州の半分の実績を誇っており、先進国からも期待されている。日本の車輛メーカは、“車両納入と保守だけでなく、運航管理そのものへ乗り出したい”と、英企業と協力し最新システムの試験に入っている。
さらには、「青函トンネル」の実績を活かしたアジアと欧州をつなぐボスポラス海峡の海底トンネル、ベトナムの斜張橋、マレーシアのツインタワー等々の世界一の記録プジェクトの実績を活かしたインフラ力が評価されている。
ポイント;いつしか縁遠くなっていた世界一番の座を、インフラ事業が、国内でプロジェクトを成し遂げ、日本流が世界一を獲得していた。しかし、世界で受け入れられるためには、様々な限界を内包していると見なければならない。21世紀は「知恵」の時代と云われる。この観点から、大きな視野でレビューすれば、新しく進む道が見えてくるのではなかろうか。

2010年02月08日

小澤征爾氏から学ぶ『新しい日本のよさ』

新年早々、世界的指揮者の小澤征爾(74)さんが、半年間の食道がん治療のため、今年6月までの国内外の指揮を前面キャンセルされる趣旨の記者会見をされた。その冒頭で、「昨年末に受けた人間ドックで見つかった。いろいろな人に迷惑をかけて申し訳ない。何とか半年以内に戻ってきたい」とTVで報道され、早期復帰への意欲を見せられた。

小澤さんにとって、今年はウィーン国立歌劇場音楽監督として最後の年に当たり、6月末には共に退任する同歌劇場総裁のファアウエル・コンサートの指揮が予定されており、「それまでに何とか治して指揮したい。指揮が無理としても、客席には行くつもりである」と壮絶な意欲を見せられ感動しました。

さらに、小澤さんは、ドイツ、イタリヤの主要歌劇場の音楽監督も歴任されていると聞き、なぜそこまで西洋音楽の本場で、東洋人の小澤さんが、これらの枢要な指揮を任されることになったのかと疑問が湧いてきた。氏がその疑問に答える様に、“それは日本の文化の良さなのだ。西洋の文化の良さに、きめ細やかな日本流を取り入れて演奏することにより、西洋の人々、世界の人々に感動を与えるのだ”と発言された。

そう云えば、日本が開国される前の江戸時代に‘浮世絵’が西欧で、既にもてはやされ、ゴッホなども浮世絵にあこがれ、その真髄を取り入れようと、描いていた。その頃、日本ではどこでも見られる絵として、庶民が日常楽しむ独特な日本文化になっていた。

日本の中に居て、‘日本の製造技術の良さ’を自慢しているだけでは、‘独善’の域を出ないのではないか?昨今、外国人が『日本の製造力』を評価してくれる発言が見られるが、それに有頂天にならず、小澤さんの様に、海外に住み込み、その国の良さを習得し、その中に‘日本の良さ’を織りなして、『新しい日本の良さ』を醸し出すことが求められる。

2009年12月14日

‘FAベンダー’が看過できない中小製造業の衰退

前々回のブログ;『モノだけに頼らない“新たな「日本流」”』で、今後、日本のものづくりの進化の在り方を探ると、“「made by Japan」をグローバルに浸透させること” に帰結されることを述べました。

そして、前回のブログで、『‘FAベンダー’のグローバルサービスとは?』をテーマとして、日本の製造業がこの「made by Japan」を推し進めていくためには、これまで共に発展してきた‘FAベンダー’の在り方も大きく進化しなければならないと考えました。そこで、グローバル化を先進的に展開している製造企業『コマツ』社長の経営方針に関するインタービュの記事で、①グローバル市場戦略と、②グローバルものづくり戦略とグローバル人材の活用との連同が重要なポイントであると述べられていました。そして、更に重要なことは、日本のものづくりが‘made by Japan’で、復活を図るためには、国内でこれまで培ってきた様々な要素技術を国内で結集できることを継続的に強化しなければならない。その価値観の共有が欠かせないとして、 ③日本の製造業の強さは中小を含めた総合力であると訴えられていました。

そして、この様な経営方針の下で、展開される有望な製造企業をグローバルサポートする‘FAベンダー’の在り方について、ヒントになると思われる私見を、上記①、②を中心に、前回ブログで記載しました。

そこで、前おきが長くなりましたが、前記の‘FAベンダー’の海外のサポート機能の進化のみならず、③に述べられている国内中小製造業を含めた総合力を強化する方法論について、次に掲載する09年10月12日の日経記事を引用し、今回のブログを展開したいと思います。

アマダ;板金加工全寮制で指導 / ≪中小企業の後継ぎ育成≫
板金加工機大手のアマダが、親の板金加工業を継ぐ若者の育成に乗り出した。板金加工企業の多くは零細規模の家族経営だが、国内市場は低迷傾向で、親や、同業他社から技術を見習う事業継承の流れは途切れがちだ。

今年の4月に、アマダが開設した、資格取得も含め半年かけて板金加工の機械技術を学ぶ職業訓練コース、その狙いは、
①徒弟制度衰退で「親方」の肩代わり
②半年間の全寮制:1日7時間 8資格取得も含む
③悩み分かち合い、切磋琢磨

とある。

第一期生は、親が板金加工業を営む18~33歳の7人が参加した。参加者は全寮制の下、寝食をともにしながらものづくり企業の後継社長を目指す。板金機械の扱い方や加工技術はもとより、工場管理、ビジネスマナーなど、30の講座を学ぶ。

講座は半年間の全寮制で、ピアスは禁止、朝は午前7時半までに起床、1日7時間の講義をみっちり受ける。クレーンやフォークリフトなど、8つの国家資格(免許)の取得も含まれており息つく暇もない。

門限は午後10時、寮に帰っても補習や復習が待っている。参加者の一人(26歳)は、“会社の看板を背負っているだけに責任感が重く怠けていられない”とモチベーションも高い。アマダの能力開発部部門長は、“7人の同期生は、始めは寮の個室で過ごすことが多かったが、提出期限のあるリポートの作成や復習などで次第に互いに教え合う姿が目立つようになった。一つ屋根の下で過ごすことで、「従業員と力を合わせて会社を伸ばしていく経営者の資質作りにもつなげる」狙いがある。さらに、中小企業の後継ぎとしての悩みも分かち合いながら切磋琢磨できるのがこのスクールの特長である” と云う。この講座開設の背景には、従来、徒弟制度によって伝承されてきたものづくりが失われていることにある。家内工業の代表格である板金加工会社では、親の指導を仰いだり、同業他社に出向いて面倒を見てもらいながら技能を磨くのが一般的であったが、昨今では、就業意識や働き方の多様化から事業継承にとらわれない子供が増加している。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの05年調査でも、後継者不足から廃業を検討すると回答した中小企業経営者は25%にも及んでいる。父権が弱まり、子弟制度が敬遠される親子関係も変化しており、「技を見て盗め」、「五感で覚えろ」といった教育は通用しなくなった。

この様に、国内の板金事業者の減少は機械を売るアマダにとって死活問題である。『アマダが“親方”として後継ぎを一人前に育て、安心して経営をバトンタッチしてもらう必要がある』と書かれていた。

コレは、‘FAベンダー’としても、『国内の中小を含めた製造企業の総合力強化の方法論』として、他山の石として看過できないヒントである。

2009年11月16日

‘FAベンダー’のグローバルサービスとは?

前回のブログ;『モノだけに頼らない“新たな「日本流」”』の末尾で、三菱電機の「FAコミュニケーションセンター(FCC)」の在り方を、今一度再考し、実現することができれば、“日本の製造企業が生き残りをかけた「新たな日本流」への進化と、その遺伝子をグローバルに伝え、「made by Japan」を浸透させること” の手助けが、出来るのではないか? そして、その展開を速やかに行えば、まだ間に合うのではないか? と書きました。云うまでもありませんが、三菱のFCCは一例として掲げたまでで、般化すると、日本の生産設備メーカや、FA機器メーカ・システムベンダー(以降、‘FAベンダー’と略記)の今後の在り方です。

これまでの‘FAベンダー’は、日本の製造企業の発展と共に、厳しい顧客企業に教えられ、そのニーズをくみ取り、製品に反映してきたのです。これからのグローバル化でも、その絆を強くして、世界に立ち向かわなければなりません。これまでのFAベンダーのサポートサービスは国内主体でしたが、今、新たなグローバル化への脱皮が求められているのです。即ち、『これからの‘FAベンダー’のグローバル・サポートサービスのあり方とは?』を考えてみたいと思います。

最近の新聞等の報道で、「経済危機後、“ニッポンの競争力”は、日米欧市場の縮小と新興国市場の拡大、そして、政権交代に伴う政策変更と、日本企業の経営環境が大きく変わるなか、成長に向け競争力は維持できるのか、そのための方策はどうすべきなのか?」の企業トップのインタービュが目立ちます。今回は、コマツの例を引用し、(コメント)を試みます。

コマツ社長:野路 国夫氏のインタービュ;《技術革新の拠点は国内》
①グローバル市場戦略
“建機の世界市場規模は、07年度の水準に戻ったが、先進国は底が見えず、中国、インド、ブラジルなど新興国は前年比プラスに転じ、明暗が分かれおり、明らかに新興国主導の時代に入った。中国では5割高のハイブリッド機が日本より好調。長時間稼動で使われるため、燃費効率が良い方がペイするのだ。新興国向けは価格を一律に下げる発想はなく、他社が追いつけない最先端モデルを投入する戦略を貫く。”とあった。
(コメント)他社の記事にもあったが、従来の海外戦略は、国別にシリーズ機種を投入し、シェア・アップ狙いであったが、これからはグローバルに広く薄く、得意製品に的を絞る市場戦略が、新しい流れの様である。従って、‘FAベンダー’は、この「グローバルに広く薄く」に注目し、グローバルサポート体制と内容を整える必要があるのではないかと思う。

②ものづくり戦略と、グローバル人材の活用
“コマツは、‘日本企業’として雇用を創出していくという経営理念である。中核技術の開発、生産を担うマザー工場も海外に移転すれば‘日本企業’ではなくなる。中国で量産するハイブリッド機も基幹部品は国内から送り現地で組み立てる。国内で技術革新を続け、10年かけてコストを半分にするのが経営であり、日本を研究開発の拠点とする。”と云う。
日本は雇用不安が高まり、同時に少子高齢化が進むなかでの対応は?に応えて、“アジアでの人材の積極活用は欠かせない。これまで、中国など海外工場は組み立て中心であったが、生産技術や工場管理、機械加工でも幹部社員を育てる必要がある。フィリピンでは4年間研修を受けた大卒を、世界の鉱山、・インフラ工事現場へ派遣している。人件費が安いからではなく、英語が堪能で海外での適応力も高く、日本人にはない熱意もある。
(コメント)ものづくりの基盤は日本に置く方針は、やはり製造業は不変である。従って、‘FAベンダー’としても日本を核とした、グローバルサポートネットの再構築が求められ、海外サポートの‘人の質’が問われる。人材活用も管理、技術層へレベルを上げる必要がある。さらに顧客サポートの人材は、各国対応ではなく、フィリピン人の例(参照:産業の「絹の道」...三菱のインドFAセンターの例)の如く、適材適所でグローバル活用を行う必要がある。その育成法は、日本人は海外現地へ、外国人は日本へとローテションを行い、相互に‘棲み込み’研修が有効である。

③日本の製造業の強さは中小を含めた総合力
“我が国の様に、製造の様々な要素技術を国内で結集出来るのは世界で日本とドイツくらいである。グローバル競争を勝ち抜くためにも中小の取引先をまもることが重要だ。”と、不透明な政策の転換の行方に加えて、産業界では調達先を絞り込む動きが気になると云う。
(コメント)‘FAベンダー’は、過去、大手ユーザ、ベンダーヘの販売に目が行き勝ちであったが、今後は、中小ベンダーの海外進出も不可欠である。それを助けるグローバルサポートの在り方の再考も肝要である。