FA-IT-Researchでは、製造業の現場のキーワードである『見える化』、そして、 そのアキレス腱となる『FA-IT交差点』にスポットを当て、皆様との議論の絆、 知恵の輪を広げていきたいと思います。

2011年11月21日

『グローカル・モノ作り』の再定義の事例

前回ブログで、『日本のモノ作り復活のカギ』は、従来は、世界は単一化して行くものと考えられており、「一物一価」経済の‘グローバリゼーション’と想定していたのを、全く正反対の‘ディープ・グローバリゼーション’であると、認識を改めることでした。
 今や世界は、経済のますますのグローバル化が進展するなかで、各国、各地域など、個々の市場は固有の文化に根ざす自己主張に目覚め、それぞれの「グローカル」といわれる深耕が求められていることが、東日本大震災を契機に明らかになった。
 即ち、今や、日本国内で企画された製品を「一物一価」式に売り込んでも、それぞれの市場で受け入れられないし、多様化する仕様を一手に国内で対応することは、個々の要求仕様の製品化が困難となり、コスト的にも実現不可である。さらに、今回の想定外と云われるサプライチェーンの破綻で、日本のモノ作りは、世界の各地域で「グローカル」方式を展開する道しか残されていないことが明らかになった。
 従って、個々のモノ作り企業は、国内他社、現地企業と連携することで、自社の強みを遺憾なく発揮できる自社固有の『グローカル・モノ作り』とは何ぞや? の再定義が求められています。
 そこで、今回テーマは、上記の背景の中で、この『グローカル・モノ作り』の再定義に取組む具体例を見つけました。次のインタービュー記事の要約を紹介し、その方法を考えてみたいと思います。

【日本キラピカ大作戦】 「スマート」で世界に出ろ
日本は「スマート技術」も流出させてしまうのですか
半導体、液晶、太陽電池の二の舞にならぬよう
ジョイントベンチャー;スマートシティ企画  佐々木社長 (聞き手;山田久美)

「スマートシティ企画」社の紹介
2009年9月に設立されたジョイントベンチャー
 現在、三井不動産やシャープ、伊藤忠商事、独SAPなど、国内外の企業19社が参画、今後も増える予定とのこと。東京大学総長顧問で三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏と三井不動産、佐々木氏が代表取締役社長を務めるイーソリューションズ社が中心に創設されたプロジェクト運営会社。
 少子高齢化や地球温暖化など、世界に共通する課題を世界に先駆けて解決し、“「問題解決先進国」になることで、持続可能で希望ある未来社会を築いて行こう!”というスローガンを掲げています。

ワンストップで先進モデルを提供
スマートシティの先進モデルを、ワンストップで、トータルソリューションができるのが特徴で、そのモデルを日本国内だけでなく、広く世界中に展開して行くことを目指している。そのフラグシップ・プロジェクトとして、「柏の葉スマートシティ」を推進中である。
 その理由は、スマートシティの市場規模は、今後20年間で3100兆円あると言われている。その中で、スマートシティの重要な構成要素として、太陽電池や電気自動車がある。これらに関しては、2000年から2006年の世界における特許出願件数の実に約7割を日本が占めており、日本の環境・エネルギーに関する技術力は世界最高水準にある。日本が失われた20年から脱却し、これからの世代に明るい未来を残すための切り札は、環境・エネルギー技術しかないと考えている。
 そのため、今後、グローバル社会の中で、日本が持っているこの強みを存分に生し、国際競争力につなげていくことが最重要課題である。
 しかしながら、今、強い危機感を抱いているのは、半導体や液晶パネル、DVDプレーヤー、太陽光発電パネル、カーナビなどと同じ道を歩んでしまうのではないかいうことだ。 これらの分野はいずれも、世界市場において高い技術力を持つ日本が、最初は圧倒的なシェアを持っていたが、その後、あっという間に中国などの後発海外企業にシェアを奪われてしまった。
 多くの日本企業は、今でも高い技術力さえあれば、勝ち残っていけると信じている。技術は必要条件であるが、十分条件ではない。この様な考え方に改めない限り、スマートシティ市場においても、日本はこれまでの二の舞を演ずることになりかねないと懸念されている。

関連する企業同士が一丸となる
今後、何が起こるかは明白である。中国は、手に入れた技術やノウハウを基に、自国中心の産業を興し、世界に輸出し、市場シェアを伸ばして行くものと思われる。これは、アブダビのスマートシティプロジェクト「マスダールシティ」と同じで、これが世界の戦い方なのです。
 我々は、このような事態が起こりつつあることを見過ごすわけにはいきません。世界の戦い方を認識し、それを踏まえた上で、ワンストップのトータルソリューションとして、世界のスマートシティ市場に打って出ていこうというのが、我々の戦略です。
 各企業は1社で営業に行けば、下請けになりますが、複数の企業が集まり、高い技術とノウハウを持ち寄り、トータルで提案していけば、中国に技術やノウハウを簡単に盗まれることもないし、プロジェクトを獲得できる可能性も高まります。 参画している夫々の企業は、それを強く認識しています。

詳しくは、下記参照;
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110823/222215/?P=1

2011年11月14日

日本復活は、「グローバル」の再定義にあり

 東日本大震災から半年が過ぎ、この半年を振り返って、この未曽有の大震災から数多くのことを学んだだけではなく、逆にこの震災から我々に問いかけられた課題もあるのではないか? それは、過去の日本のモノ作りの繁栄への‘復旧’とか‘復興’ではなく、新たな仕組みの上に‘再興’し、‘復活’を図らなければならないと、多くの論説が展開されていました。
 これらの論説のなかで、分り易くこれからの指針を与えてくれる記事に出会いました。それは、次に紹介する論説で、日本のモノ作りにとって、“これからのグローバリゼーションとは何か?”という各企業、業界、そこで働く企業人への問いかけから始められています。以下にその論説の趣旨を掲載し考えてみたいと思います。

常盤文克氏の;【新・日本型経営を探る】
日本復活のカギは、「グローバル」の再定義にあり
 「フラット化しない世界」に生き残る条件


今回の震災では、モノ作りのサプライチェーン(供給網)が分断されました。東北地方には有力な部品メーカーの工場が集積しており、部品の供給が滞ってしまったのです。 サプライチェーンマネジメントと称し、コストと在庫の最小化、時間の短縮さらには安定供給と効率の最大化を目指してきた仕組みにとって、大震災は大きな落とし穴だったと言えます。結果として起きたモノ作りの停滞は、日本のみならず世界にまで広がりました。

震災で見えてきた世界が「つながる」意味
この事実から、世界はつながっているのだ、という現実を私たちは身をもって理解したわけです。世界は単に、海や陸を介して地理的につながっているだけではありません。
 金融経済やモノ作りのサプライチェーンなど、人間のあらゆる活動がネットワーク状につながり、連鎖しています。この「世界はつながっている」という感覚こそが、「グローバルである」ということだと思います。
 すなわちグローバリゼーションとは、人や企業がモノ・カネ・情報などのつながりの中でどう生きていくか、どう仕事をしていくか、このつながり自体の構造を状況に応じてどう作り直していくか
──ということでもあるのです。
 従来の見方は、グローバル化によって世界がフラット化して均質になり、単一化していくというものでした。経済は単一化が進んで一物一価になり、そこを人やモノ、カネが駆け巡っていく。エコノミストや大学の先生たちは、そうもっともらしく語っていたのです。ところが、今回の大震災で、過去20年言われていたグローバリゼーションとは別の方向に、いや反対の方向に物事が進んでいることに気づかされました。世界は単一化するどころか、むしろ多様化が進み、「グローカル」という言葉が生まれるほどローカルの重要性が増しています。
 各国、各民族固有の文化が頭をもたげ、小さな国や地域が自己主張を強め、ナショナリズムが台頭しています。キリスト教文化圏とイスラム教文化圏の宗教間対立も鮮明になっているように感じます。
 そんな時代だからこそ注目したい言葉に、「ディープ・グローバリゼーション」があります。

真のグローバルとは「ローカル」の積み重ねである
このディープ・グローバリゼーションとは、数えきれないほどある個性的な「ローカル」を組み合わせて結合したものが「グローバル」である。ローカルな活動の積み重ねがグローバルであって、グローバル化をさらに進化させるにはローカルを深耕しなければなりません。これからは、世界の市場を大雑把につかまえるのではなく、「グローカル」と言って、個々のローカルな市場を深く掘り下げていこう、ということです。
 企業のマネジメントの仕組みは、これによって大きく変わります。従来、日本企業のグローバル経営では「海外事業」と呼んで自国に本社を置き、海外の国々に衛星のように支社や支店を置くというものでした。
 これをディープ・グローバリゼーションの発想で考えると、本社もローカルの1つだということになります。そこで、自国の本社を含む世界中の支社を統括する別会社(グローバル本社)を置き、この統括会社のボードメンバーを各支社のトップで構成する─。すなわち、この会社をグローバル戦略の拠点としていく、発想の転換が求められています。
 また、単に競争原理だけが強くならないビジネスの仕組みも重要になります。最近、「coopetition(コーオペティション)」
という言葉を耳にする機会がよくあります。「cooperation(協力)」と「competition(競争)」を掛け合わせた造語で、相手と競争はするが協力もする、すなわち競争と協力を両立して仕事をする、といった意味です。 世界中の人やモノ、カネ、企業がつながっている現代では、このように競争だけに終始しない仕組みが求められます。

個性なくして企業は生き残れない
本当の意味でのグローバルを志向するのであれば、企業の規模の大小よりも、ビジネスモデルに個性があるかどうかが重要になってきます。
 「つながり」の重要性を痛感させられるいま、しっかりとした個性をもって、世界と積極的に創造的なつながりを作っていくことが大事です。日本企業は世界と離れては生きていけません。

詳しくは、下記参照;
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20110927/222830/?P=1

2011年11月07日

世界に羽ばたく外向き、肉食日本人学生たち

10月のブログは体調不良のため、休ませて頂きました。11月から再開させて頂きます。

 震災前の2月21日更新のブログ;『日本の将来を担う「若者世代の成長」を考える』を掲載し、グローバル時代の幕開けで、日本の若者の内向き志向を憂え、“大人たちは、若者たちの置かれている社会環境を理解し、彼らの人生をもっと応援してやるべきだ。それには一人でも多くの大人が教育のあり方に関心を持つことである。今年こそ、閉塞状態の日本を救う教育の実現に向けて国民的議論を起こすべき年である。”と訴えました。
 その後、3月11日の東日本大震災を契機に、日本の若者が人類愛に満ちた善意のボランティア活動を目にした外国人からの称賛記事を見聞し、日本人の我々が気付かなかった日本の若者の良さを再認識するようになりました。
 そこで、今回のテーマは、表題の様に、最近、日本の若者が世界に雄飛し活躍する姿の記事が掲載され、さらにその意を強くしました。この記事を紹介し、更なる世界で活躍する若者へのエールを贈りたいと思います。

田村耕太郎氏の【経世済民見聞録】 2011.09.14 (記事抜粋)
世界へ羽ばたく外向き・肉食日本人学生たち
ソウルで日本の夜明けを感じた

バブル期より増加した海外留学生
 前回は、韓国社会における激しい競争の背景について書いた。今回はその韓国で見た日本人学生のたくましい肉食・外向きぶりについて紹介する。
 日本の若者について、相変わらず、草食・内向きといった評価が多いと聞く。海外にいる私には、日本の若者の全体像をつかむのは難しい。だが、草食・内向きが増えたという実感はわかない。私の周囲では、外向き学生は減っていない。
 世界全体で、日本人の海外留学生の総数はバブル期より増えている。2010年12月に文部科学省が発表した「日本人の海外留学者数」によると2008年に海外の大学などに留学した日本人の数は6万6833人だった。バブル絶頂期の1989年は2万2798人。4万4035人も増加している。
 アメリカに来ている学生もたくましい。この連載で紹介した、エール大の古賀健太君やハーバード大学の小林亮介君、岡洋平君などは、学部生として米国人学生と堂々と互角以上の競争をしながら、スポーツや芸術にも精を出している。私はこうした学生をこの目で見てきた。
 大学院留学組も、数だけは多かった私が留学していた90年代半ばと比べて、学校や社会に積極的に溶け込んでいる。様々なイベントや勉強会を企画して外国人学生と交流している。中学や高校時代を英語圏で過ごした英語が上手な学生も増え、授業でも活発に意見を言って目立っている。

HPAIRに、活きのいい日本人学生数が集まった
注)Harvard Project for Asia and International Relation(HPAIR)

8月下旬にソウルで開催されたHPAIR(ハーバード大学が主催するアジア最大の学生による国際会議)、日本人学生の活躍が目立っていた。これに参加した日本人学生は32人。日本で開催した回を除けば過去最多だった。日本の大学に通う学生もいたが、海外の大学に学ぶ日本人もいた。
 彼らは、講演後の質疑応答でもパネルディスカッションでも、外国人スピーカーや聴衆に臆することなく、アグレッシブなアメリカ人や中国人学生を押しのけて手を挙げて鋭い質問をしていた。韓国政界の大物議員や米大統領候補であったマイク・デュカキス州知事などのスピーカーが答えに窮する場面もあった。様々な交流イベントでも、多彩なパフォーマンスで人気を博していた。
 私が登壇した最終日のパネルにも多くの日本人学生が駆けつけてくれた。私のパネルのテーマは「ビジネス・リーダーシップ」。各国政府が取る政策がグローバル企業の経営戦略に与える影響を話し合うセッションであった。“政治、政府、民間すべてを経験している私には、各界の連携の現状と課題について語ってほしい”とテーマを振られていた。

民間を経て政治を目指せ!
私は政官財の人材交流の重要性を訴えた。私が政財官の人材交流を説く背景には、今後の政治や行政には、民間の経営センスがこれまで以上に必要になると思うからだ。筆者は“グローバルな世界を若くして経験した優秀な人材がリーダーにならないと、これからの世界をよくできない。自分の利益を追求する時期があるのは当然だが、それだけでは君らの素養がもったいない。世界のために奉仕してくれ!”と、締めくくった。
 学生の質問は私に集中した。質問は日本の政治や経済についてのものが多かった。次世代を担うアジア・世界の学生たちが日本に高い関心を持ってくれることは、素直にうれしかった。今まで世界中のいろいろなパネルに登壇したが、日本に対する聴衆の関心が薄く、悔しい思いをすることが多かった。日本人学生もどんどん手を挙げ、鋭い質問を見事な英語でぶつけてきてくれた。
 いちばん熱心に問われたのは「人脈づくりのテクニックを教えて」というものだった。私は「利益の追求が透けて見えると、相手は白けてしまう。世の中を良くしたいとの思いから始まる志高い人脈づくりならば、皆が勝手に支援してくれる」と答えた。今回は未来を担う若者が相手なので、講演も質疑も徹底して青臭さを貫いた。これがテクニックに走りがちな優等生たちに、意外と受けたようだ。

「世界に出て世界を変えていきます!」
 アジアを中心に世界中から集まった学生たちの前で話をするのは本当に楽しかった。皆アグレッシブで未来を感じさせてくれた。彼らが新しい世界と時代をつくっていく。 その中で堂々と渡り合う日本人学生が過去最多だったことは、これまた格別にうれしかった。パネルが終わった後に行った日本人学生との交流も懇談もすべて英語で行った。帰国子女ではない日本人学生たちが堂々と英語で貫き通していたことも素晴らしかった。日本人同士なのに英語で話すのは、日本では照れ臭い。だが世界では中国人同士、韓国人同士、インド人同士でも皆英語だ。
 日本の学生の多くが、“田村さんの期待を超えてみせます” “これから世界にガンガン出ていきます” “世界を変えてみせます”と宣言した。面構えも不敵で、やる気にあふれており、素晴らしかった。学部時代からこういう国際舞台で活躍するその頼もしさに感銘を受けた。

世界から受ける刺激忘れるな!
 こういう国際会議を学生に仕切らせることこそ最高のリーダーシップ教育なのだと思った。企画から実行まで、世界を相手にやらせることで鍛える。リーダーシップは黒板では教えられない。
 その後、ツイッターを通じて交流し、ソウルで会った日本人学生たちが引き続き相互に刺激を与え合い続けているのが分かった。ある学生は“このレベルの連中とずっと刺激し合いたい”と云っていた。今回の刺激を忘れないでほしい。彼らなら、さらに活躍できるようになる。世界の同学年と戦う意欲を持って、世界に出る日本人学生は増えている。韓国で日本の夜明けを感じた。


詳しくは、下記参照;
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110906/222494/?P=1

2011年09月26日

外国人から見た‘日本の良さと助言’-Ⅲ

前回からの特集:≪新しい日本へ≫ 『復興の道筋を聞く』のインタビュー記事から、感銘を受けた語録の収録を続けます。

記事3;日経2011.08.14 掲載インタビュー
米ユーラシア・グループ社長
イアン・ブレマー氏(聞き手:米州総局編集委員 藤田和明氏)
世界の政治リスクを分析、各国の政府系機関や企業へ助言する会社

明確な外交戦略を持て
― 日本のリスクとして、政治の「無党状況」を懸念し続けています
一方、東日本大震災後、甚大な被害にも拘わらず、わずか数ヶ月で復興に動き出している日本人の姿に、世界は感銘を受けた。
 夏場の電力不足を市民みんなが我慢し、静かに慎み深く解決に当たる姿には、他の国はまねできない。しかし落胆させるのは、政治の混迷と無策ぶり、未曽有の危機にも政治は変わることなく、内紛を繰り返し、日本の未来への決断が出来ずにいる。日本のリーダー不在は深刻であり、政治への絶望感が極まっている。
― 日本が取り組むべき経済の課題とは?
日本で最も強力な経済主体はグローバル企業だ。それが日本を去ろうとしている。国内市場は縮小し、労働コストもエネルギーも高い。民主党政権で産業界や官僚とのパイプも途切れ、有効な産業政策も打てない。
 日本は‘成長’への投資をあまりにも怠ってきた。人口減少は深刻だ。移民はともかく、まず女性が労働参加し易い環境を整えた方が良い。
― 中国企業の台頭など、企業の競争環境は厳しくなるばかり
世界は、西側の自由市場の資本主義と、中国などの国家資本主義がぶつかり合う時代に入った。西側から得た技術を使って低コストの資本と労働力でシエアを奪う。ルールの全く違う国家が運営する企業との競争になる。西側が勝つには研究開発でリードし続けるしかない。高速鉄道など、一旦技術が渡ったら次はコスト競争で勝てない。これに適応できない企業は、競争から撤退すべきだ。

極なき時代到来
― 彼らが内包する弱さもあるのでは?
国家利益のために資本を配分する手法は、どこかで効率性を欠く。中国の鉄道事故は運営の不透明さ、安全基準の問題を暴露した。彼らはカイゼンを続ける組織ではない。カイゼンと起業家精神こそ西側が勝てる道である。
― 世界は主役なき「Gゼロ」の時代だと指摘されています。日本の進路は?
米国が覇権を握り、同一の価値判断へ向かうグローバル化への流れに日本がついて行く時代は終わった。自由主義の資本主義と国家資本主義が激しく火花を散らす、極なき時代のなかで日本も対応を迫られている。
 日本には本物の外交戦略が要る。貿易や通貨など多様な場面で利害が衝突し、安全保障のあり方も変わる。黙っていてはだめだ。国益や判断基準を明確に主張していかなければならない。国家のトップが外交を主導し、それを支える強力な安全保障の評議会や専門のシンクタンクも欠かせない。
― 世界が求める日本の役割とは?
例えば、危機に直面する欧州の財政問題。ここで日本の姿が見えない。強い欧州となるために何が重要で、何が出来るのかを、日本は欧州の将来のために発言をしなければならない。核拡散問題やアラブの民主化など、日本の経験からもっと主張すべきである。
 外国から見れば、日本は思慮深く、善意の国であり、長期的関係を築くことを重視している。震災では持続性や安定性を世界に見せた。かたや世界の国々は、成長を追い求め、環境や食糧問題などのひづみを生み、危うい次元に踏み込みつつある。日本が国際舞台で果たす役目はとても大きい。

前々回、前回と今回にわたって、 ‘日本の良さと助言’-Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの表題で、4名の外国の方々からのインタビュー記事を掲載した。
 何れも、日本の政府機関とか、企業との接触の経験をもつ知日派で、しかも国際派の方々の貴重な助言であった。危機感をはらむ外国の国々の未来も知悉されている一方で、日本はそれらの危機を先駆けて遭遇し、英知で乗り越えてきた優れた国民性であることも評価されている。
 しかしながら、日本は戦後、いわゆる西側の一員として欧米軌軸の傘の下で安住しながらものづくり経済大国へと発展を遂げてきたが、世界は一変して多極化時代に入り、国内に籠っていては衰退の道しかなく、生き延びて更なる発展を遂げるには、現在外国からも評価されている日本の良さをグローバルものづくりへと進化させる道しか残されていないのである。
 上記に掲げた、海外の諸賢の日本への助言を総括すると、‘日本流ものづくりリーダー’に課せられた任務は、先ず多極化するグローバル世界の国々へ出て行き、その国に立地し、その国の人々と協働しながら、その国へ日本流ものづくりを移植し根付かせ、育て上げることである。

2011年09月20日

外国人から見た‘日本の良さと助言’-Ⅱ

8月掲載の日経新聞の特集:≪新しい日本へ≫ 『復興の道筋を聞く』で、知日派の外国人の方々からのインタビュー記事が連載された。
 これらの記事を引用し、語録の様な形で、私が感銘した行(くだり)を収録し、復興の道筋を考えてみたい。

記事1;日経2011.08.19 掲載インタビュー
韓国全国経済人連合会(全経連)前会長
趙錫来(チョ・ソクレ)氏 (聞き手:ソウル支局長山口真典氏)
1959年早大理工学部卒、行政暁星(ヒョソン)グループ会長

企業の意志決定 素早く
― 日本の現状をどう見ますか?
東日本の部品生産など経済活動の回復は予想より速い。しかし被災地域の復興が遅れがちだ。
 日本人の冷静な対応は尊敬すべきだが、韓国の『パクリ(速く)精神』
に比べ、時間がかかり過ぎる。政策の是々非々を考えているだけでは一向に復旧が進まない。
― 日本を追い抜く韓国企業が増えました
日本企業は海外進出で出遅れたが、韓国が日本企業から学ぶべき点は多い。団結力や正確な仕事ぶり、会社への忠誠心に加え、技術力や生産性など、なかなかまねができない。ただ世界は急速に変化している。ライバル企業より先に意志決定しなければ、チャンスを逃す。韓国のトップダウン経営は時に誤るが、即決できる。日本の根回し型決定は時間がかかり過ぎるため、トップが決断できる仕組みへ変えるべきだ。

まず日韓FTA
― 日韓が手を組む例は増えるでしょうか?
最近、プラント輸出など、第三国の日韓連携が急増している。日本企業が計画づくりやファイナンスを担当し、韓国企業が建設を受けもつなど、互いの強みを生かすことで欧米企業に勝つことが出来る。
 韓国と日本が主導し、欧州連合(EU)と競争できる東アジア共同体をつくるため、そのモデルになる高水準な2国間連携をつくるべきだ。日本はTPPに参加する用意があるというなら、韓中FTAは時期尚早であり、まず韓日FTAを優先すべきだと考える。

事故経験を生かせ
― 日本の「脱原発」論争、どう思うか?
原発を放棄して成長は難しい。電力不足で製造業が競争力を失い、成長軌道に戻れなくなる心配がある。想定を超えた事故、見方を変えれば貴重な経験だ。これを活用すれば、世界の安全な原発を主導できる。
― 日本の産業、どう変わるべきでしょうか?
欧米は自動車産業などを中心に急速な再編が進んだ。日本も自動車だけではなく、化学、機械、造船、電機、電力などで大胆に再編を進め、競争力を持つ強い企業をつくるべきだ。
 これからは韓日の企業が競争し合うだけではなく、投資し合う必要もある。企業の協力や統合で競争力が高まれば、域外へも進出しやすくなり、消費者への良いサービスを提供することもできる。


記事2;日経2011.08.18 掲載インタビュー
セールスフォース・ドットコム会長
マーク・ベニオフ氏(聞き手:田中暁人氏)
1999年同社設立、企業向け‘クラウドコンピューティング’専業大手

有望ベンチャーに光を
“日本は気付いていないかも知れないが、日本は成功事例に溢れている”と、当社は現在、日本のITベンチャーへの投資を加速している。同会長が、何度も日本を訪れるうちに、この国には、素晴しい起業家がいて、有望なベンチャー企業が沢山あることに気づかれた。その大半が過小評価されている。米国人が日本のベンチャー投資の魅力を宣伝するのも奇妙だが、日本は投資機会にあふれた非常に魅力的な市場だ。

あきらめるな
― 日本ではリスクをとって起業する若者が減ったと云われます
日本の人々は失敗例にとらわれ過ぎだ。素晴らしい技術があり起業家がいて、チャンスや成功例がいくらでもあるのに、それに目を向けようとしない。まずは、成功例に目を向けることから始めたらどうか。

信頼、ネットから
― 原発事故への対応のまずさなどから世界の信頼が揺らいでいる
新しい日本は、信頼の上に築かれなければならない。自国の国民や企業からの信頼に加え、他国や外資系企業の信頼を取り戻す必要がある。
 ネットを通じて世界の人々が瞬時に意見を交わせるソーシャルの時代だからこそ、信頼を最重要視すべきだ。政府がSNSなどを使って必要な情報を開示すれば、信頼関係を取り戻すことにつながる。
― シリコンバレーの経営者は、今の日本をどう見ていますか?
期待しているし、心配もしている。今こそ大きな課題にしっかり取り組んでいる姿勢を世界の政府や企業に向けて発信する必要がある。セールスフォースは全ての不具合を顧客に開示するサイトを持っている。日本政府も同様のサイトを立ち上げ、震災や原発事故のあらゆる情報を各国語に自動翻訳して開示すべきだ。

2011年09月12日

外国人から見た‘日本の良さと助言’-Ⅰ

8月22日更新の『日本の‘グローバルものづくリ’ヘの再出発』で、既に動き出した企業の事例と、8月30日更新の『グローバル モデル企業、コマツに学べ』で、10年前からグローバル化を定着させてきた先進企業、コマツ会長のインタビューを掲げ、‘日本のグローバルものづくりの再出発’を考えてきました。これらの中で、ものづくりを国内中心思考から脱却することに躊躇する日本企業は、早晩、新興国の企業に取って代わられる懸念があります。その企業自身の消滅を免れないばかりか、日本経済それ自体が、沈下する事態も起こり兼ねないと、危機感に陥りました。

今回からのブログは、日本国内に閉じ籠っていてはなかなか見えてこない‘日本の良さ’と、その良さを下地に、日本はどう変わるべきかの‘外国人から助言’の記事を引用して日本企業が進む‘道筋’を考えてみたいと思います。

先ず、最初に取りあげるのは、上記の8月22日更新のブログの末尾に参照掲載しました;カルロス・ゴーン ルノー会長兼CEO、日産自動車社長兼CEOの寄稿による『変革へのギアチェンジ』です。
 同氏は、ご存じの様に、日産自動車のトップとして、直接指揮されており、日本企業の経営指揮による実体験からの外国人としての発言でした。我々日本人として大いに自信が与えられ、貴重であると感銘しました。
以下に、私が感銘した部分を抜粋し掲載します。

「日本の価値」は、3つある
①日本のサービスの質は、他国にはない

 日本企業による消費者への対応は節度と謙虚さを旨としており、これほど信頼がおけて期待に違わないサービスは、他のどの国にもまずない。
②シンプルさを大事にする
 複雑な社会は混乱を招きがちだが、日本では、シンプルさを大事にするがゆえ、それほど大きな混乱は起きない。日本人は自分のやるべきことをはっきり認識している。
③プロセスを尊ぶ国民性
 日本人は、継続的な改善の達人だ。物事を実行していくのに、日本人ほど長けた国民はいない。集中、統制、たゆまぬ努力、そして質を体現し、加えて序列を重んじる。こうした価値は、日本企業がどこで事業を展開しようとも通用すると私は考える。また、日本にはこうした価値を新しい現実に適合させていく態勢も整っている。

変革の能力
日本は新興国へ最初に飛び込むことはしなかったが、参入したが最後、その業務遂行力は他とは比較にならない。日本はあきらめることなく行動し続け、やがて突破口を開いていくのだ。
 イノベーションについても同じことが言え、強いリーダーがいて指揮を執っているケースが多い。実は日本に多いのは、他者がイノベーションを起こした分野に後から参入し、やがて元のイノベーションを追い抜くケースである。日本にはイノベーションの突破口を開くよりも「カイゼン」の才覚がある。日本人は継続的改善の発明者であり、達人なのだ。
 日本では、変革をシンプルにし、しっかり説明を行ない、人々の気持ちを変革に向けさせる必要があるのだ。それができれば日本では何でもできる。私の経験では、日本ほど変革をやりやすい国はない。日本人は変革の内容と理由を理解するのには時間をかけるが、一度理解すれば早い。

グローバル社会と日本
私は日本企業が変わることはできると確信している。しかしグローバル化、とりわけ新興市場においてのビジネスの成否が、日本企業にとっての真の試練となるだろう。ときには苦痛を伴う難しい戦を強いられる。
 長期的には、生産拠点としての日本の存在感は薄れざるを得ない。国内の機能は研究所的な存在となり、新しいモデルの考案やプラットホームの構築、人材教育などの知識開発に集中していくことになるだろう。
 加えて日本企業の難題は、国々の多様性への対応で、その重要性を理解し取り入れない限り、戦い抜くのは難しいであろう。
 日本の産業界はコミュニケーションやマーケティングの能力が明らかに弱い。しかも、国際競争力を高めるのに必要なこれらの能力が日本では重んじられない風潮があり、問題である。

日本を軌道にのせるためには
 日本が現状に固執しているのは、日本人が変わりたくないからではなく、リーダー層が、はっきりとした方向感を持っていないからだ。
 私が日本企業のリーダーにアドバイスすることは、時間をかけてビジョンを作り、それをシンプルにして説明することにより、人々にとって意味のあるものにすることである。

詳細参照:
http://www.nikkeibp.co.jp/article/reb/20110721/278396/?ST=rebuild

2011年08月29日

グローバル モデル企業、コマツに学べ

先回までは、東日本大震災以降の日本の新しい‘グローバルものづくり’ヘの再出発を期す企業の姿を追ってきたが、次に掲げる企業は、既に10年前の2001年から、‘グローバルものづくり’への転身を図っていた。それは、先端グローバル企業;坂根正弘会長が率いる『コマツ』である。

次の多田和市氏のインタービュー記事を掲げ、‘グローバルものづくり’への再出発の理念と覚悟を読み解いてみたい。

日経ビジネス:2011.07.27
日経BPビジョナリィー経営研究所長 多田和市氏
『先端グローバル経営』に舵を切れ

《モデル企業、コマツに学べ》
第1回 日本企業はまだまだ成長できる


少子・高齢化、人口減少、円高、高い法人税など、日本企業を取り巻く経営環境は厳しさを増し、おまけに、東京電力福島の第1原発事故により、突然、惹起したエネルギー不足問題。日本国内にとどまっている限り、待っているのは「衰退」の2文字しかない。
 では、どうしたらいいのか?
成長分野に身を投じ、自社の役割を見いだすことだ。
具体的に言えば、急成長している新興国に代表されるグローバル市場で、自社の「強み」を発揮し、ビジネス展開をより加速することである。
 最近、日経ビジネスの取材で、コマツの坂根正弘会長にお会いした。
ご存じのようにコマツは、中国をはじめとするグローバル市場で積極的にビジネス展開し、高収益を上げている。2011年3月期の売上高営業利益率は実に12.1%。製造業としては極めて高い。
以下に、坂根会長のグローバル経営の考え方を紹介したい。

“日本企業は、円高や高い法人税、エネルギー問題など『五重苦』『六重苦』を抱えているが、日本の根本的問題は、成長しなくなったことと、デフレになったことだ。ただし、「今なら間に合う」”と、坂根会長は話し、“『東京一極集中』という日本の構造問題にメスを入れて、グローバル市場を本格的に攻めれば、再び成長できる”と強調された。

目指すのは、日本国籍のグローバル企業
コマツが目指すのは日本国籍のグローバル企業であって、無国籍のグローバル企業ではありません。今回の株主総会でも、“これだけグローバル企業と言われるコマツに、外国人役員がいませんね?”と質問が出ましたが、外国人役員なんて本来いらないのです。現地を外国人に任せているのだから。しかも、昨日今日入ってきた人ではなくて、中国でも28年目、米国でも二十数年、たたき上げでやってきた人たちです。たまたま日本国籍だから、日本に本社があって、その本社のボードメンバーは日本人だけなのです。 ただし、インターナショナル・アドバイザリー・ボードを作っていて、1人は外交評論家・岡本アソシエイツ代表の岡本行夫さんですが、残りの3人は米国人、欧州人、アジア人です。年2回開いて、普段役員会で議論している大事なことを4人に話をして、意見をもらっています。いわゆる外国人の目という部分はそうやって補完しています。
 だから、ボードメンバーに外国人を入れるという形式的なことにとらわれるよりも、実際グローバル展開をどんどんやってしまえば、形式的なことが大きな問題を持っているわけではないのです。
 世の中の「英語を共通語にする」という動きについても、坂根会長の意見は、“英語を共通語にするという単純な話ではなく、コマツウェイという基本的な会社の考え方を世界で共有していることが大事。同じ価値観を共有していれば、言葉のコミュニケーションは少々弱くても、大丈夫です。”

経営の見える化を徹底
 坂根会長は、「経営の見える化を実践し、正しい経営実態を把握できれば、正しい経営判断ができる」という考え方を持っており、社長に就任した2001年、日本でモノ作りを続けるかどうかを判断するために、経営の見える化を実施した。
すなわち、コストを固定コストと変動コストに分けたのだ。その結果、変動コストは、ほかの国と比べても遜色ないレベルだったが、固定コストが高いことが分かった。
 当時のコマツは、製品点数が多く、子会社もたくさんあり、固定コストを押し上げていた。そこで、建機の製品点数を一気に、約750から半分の約370に削減し、子会社の数を約300から約110にした。
 そのうえで日本の工場はマザー工場として、基幹部品を開発・生産する拠点として存続させることを決めた。現在、国内で世界全体の半分を生産している。
 「経営の見える化」に続いて、「顧客の見る化」を徹底させた。
「KOMTRAX(コムトラックス)」をオプションからコマツの負担で標準装備に切り替えた。

 コムトラックスはもともと、盗難防止のために始めたサービスだった。15万円を出せば、建機がどこにあるのか、顧客に連絡してくれて、簡単に分かるのだ。
 坂根会長は当時、「GPS(全地球測位システム)を標準装備すれば、アフターサービスで有効に働くだろう」と閃いたという。日本や米国でサービス部長を経験していたことで、クレーム対応で苦労していたので、建機の位置が正確に把握できれば、アフターサービスが劇的に変わると思ったのだ。
 GPSのほかに、様々なセンサーを埋め込むことで、故障する前に修理に駆けつけられるようになった。その後コムトラックスは進化していった。

坂根会長の直感は見事に的中。アフターサービスの顧客満足度は一気に高まった。コマツを指名する顧客が増えたのだ。顧客満足度が上がっただけでなく、コマツの収益性向上に大きく貢献した。つまり、コムトラックスによって建機の需要動向が正確に把握できるので、スムーズな生産調整が可能になり、無駄な在庫を持たなくなったのだ。修理部品の削減にもつながった。 さらに、需要動向が地域ごと、製品ごとにリアルタイムで把握できるようになった。例えば中国の景気動向も、コムトラックスを見れば一目瞭然だ。
 現在、インフレを抑制するために中国政府による調整が入っている。その調整がハードランディングなのか、ソフトランディングなのか、コムトラックスを見ていれば見極められるようになった。

カントリー リスクを最小化
「今回、中国政府は、2004年のようなハードランディングによる調整ではなく、ソフトランディングを狙っている。2004年の時は、約1万カ所あった工事現場のうち約6000カ所をストップさせました。ところが今は、建機の稼働時間が前年比で5~8%落ちている程度です」と、坂根会長は説明する。すなわち、コマツはコムトラックスによって、カントリーリスクを最小化することが可能になったのだ。
 その意味でコマツは、リスクを最小化しながら、急成長するグローバル市場から大きな果実を獲得するという、理想的な経営を実践していることになる。「先端グローバル経営」のモデル企業の1つだと言える。

参照:【「先端グローバル経営」に舵を切れ】
モデル企業、コマツに学べ
第1回 日本企業はまだまだ成長できる
http://cmad.nikkeibp.co.jp/?4_116911_549045_120